1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「81歳で新人漫画賞」を受賞した漫画家の正体 かつては20代後半でも「遅咲き」と言われた

東洋経済オンライン / 2024年9月10日 13時0分

素朴なタッチながらデジタル処理も駆使した画面(というか、Xの投稿によればフルデジタルらしい)は、言われなければ81歳の作品とは思えない。球団オーナーがどう見てもナベツネだったり、キャッチャーが古田敦也っぽかったり、態度の大きい先輩投手が伊良部秀輝っぽかったりするのはご愛敬。実力派がひしめく「ビッグコミックオリジナル」の中で、堂々たる存在感を放っている。

純粋な新人とは言いがたいが、80代でこのような新人対象の漫画賞の受賞は、やはり“事件”であろう。同じ誌面に短編『ベイビーショック』が掲載されている第10回青年漫画賞受賞者の村上香氏は19歳なのだから、実に60歳以上の年齢差だ。

その村上氏のように、かつては10代でデビューするのが普通だった。大卒後、松下電器(現パナソニック)を経て27歳でデビューした弘兼憲史氏などは、当時“遅咲き”と言われたものだ。しかし、昨今は30代、40代デビューも増えてきた。弘兼氏のように社会人経験を経てデビューすることは決してマイナスではなく、むしろ武器になることも多い。近年隆盛のエッセイマンガでは、それこそ描き手の経歴・職歴そのものがネタになる。

そうした流れに先鞭をつけたのは、青木雄二氏だ。1990年に『ナニワ金融道』で衝撃のデビューを果たしたとき、青木氏は45歳。鉄道会社職員、町役場職員、パチンコ店店員、印刷・デザイン会社経営など、さまざまな職業を経て漫画家となった。いわゆる“マチ金”を舞台に、業と欲が渦巻くコテコテの人間ドラマは、そんな雑多な社会経験あればこそ描けたものだろう。酸いも甘いも噛み分けた人間ならではの観察眼から生まれる人物描写は、ディープの一語に尽きる。

40代デビューの例としては、『カレチ』『国境のエミーリャ』などで知られる池田邦彦氏もその一人。鉄道関係のライターとして活動後、第54回ちばてつや賞一般部門で大賞を受賞し、43歳で漫画家デビューした。古びた団地に暮らす高齢者たちの哀歓を描いた『ぼっち死の館』が話題となった齋藤なずな氏は、アルバイト的な仕事を転々としたのちスポーツ新聞でイラストルポの仕事を手がけ、40歳で漫画家に。現在59歳の池田氏はもちろん、78歳の齋藤氏も現役で活躍中である。

60代でデビューしたハン角斉

そして、デビュー年齢で青木雄二氏を大幅に超えたのが、ハン角斉氏だ。狂気じみた殺人犯の正体に虚を突かれる短編『山で暮らす男』でヤングスペリオール新人賞「編集長金一封」受賞。当時64歳で初めて雑誌に作品が掲載された。そして2022年に初単行本『67歳の新人 ハン角斉短編集』が刊行される。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください