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「アレルギー」名付けた学者の理論が黙殺された訳 専門家の間でも意見が分かれる定義とその歴史

東洋経済オンライン / 2024年9月11日 12時0分

アレルギーという現象はいまだに多くの謎をはらんでいる(画像:Teerayut0068/PIXTA)

日常生活で誰もが見聞きする「アレルギー」の語。しかし、その意味を説明できる人はどれほどいるだろうか?

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自身も体調不良の末に呼吸器アレルギーの診断を受け、アレルギー専門医や基礎研究者らへの取材を精力的に行ってきた医療人類学者のテリーサ・マクフェイル博士は、執筆に5年間をかけた著書『アレルギー:私たちの体は世界の激変についていけない』(東洋経済新報社)にこう綴っている。

「私たちが一般に『アレルギー』と称するものは、実はさまざまな病気や体調をひとまとめに突っ込んだ合切袋なのだ(中略)。それらのたった1つの共通点は、(中略)普通なら特に害のない物質(アレルゲン)に対する過敏な免疫反応が関わっていることだ」

マクフェイル博士によれば、アレルギー患者の診察・治療にあたる臨床医、そしてアレルギーのしくみそのものを研究する基礎科学者たちの間でも、何をもってアレルギーとするかは時に意見が分かれるという。

それは、アレルギーという現象がいまだに多くの謎をはらんでいることだけでなく、「アレルギー」という用語そのものの成り立ち、そして、アレルギーの研究が経てきた歴史にも深く関わっている。

元は免疫反応全般を指した「アレルギー」の語

「アレルギー」という用語が生まれたのは、20世紀初頭の1906年。今からわずか百数十年前のことだ。考案したのは、オーストリア・ウイーンの小児科医院で働いていた医師のクレメンス・フォン・ピルケである。

「アレルギー」の語は当初、異質な物質への曝露によって生体に引き起こされるあらゆる変容を指していた。

考案者であるピルケと、その同僚のベラ・シックは、天然痘ワクチン(当時はウマの血清から作られていた)を2回以上接種した子供たちの中に、ワクチンの効果が乏しかったり、接種箇所のかぶれや発熱といった炎症反応を起こしたりする患者がいることに気づいた。

シックとともに体系的な追跡調査を行う中で、ピルケはギリシャ語の「アロス〔異なる、別の〕」と「エルゴン〔仕事、はたらき〕」を組み合わせて「アレルギー」の語を考案した。

当時は免疫の研究そのものが黎明期にあり、血清やワクチンが一部の毒や感染症から体を守るしくみも、そもそも体が感染症にかかるしくみの詳細も、まだほとんどわかっていなかった。そんな中、ピルケは異物によって誘導される体内の変化(アレルギーの語源である「異なるはたらき」)が、病気に対する防御機構の鍵だと考えたのである。

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