「米国株は大幅に下落、日本株も追随」となるのか 弱い製造業指標や求人件数急低下で高まる懸念
東洋経済オンライン / 2024年9月13日 11時0分
製造業の苦境を映じたのはISM製造業景況指数だけではなく、類似指標の製造業PMI(S&P Globalが公表する購買担当者景況指数)も同様であった。PMIは47.9となり、過去2カ月で大幅に水準を切り下げ、しかも新規受注・在庫バランスの急低下を伴った。
PMI算出に用いられる5つの項目は、生産(50.5→48.2)が50を割り込み、新規受注(47.7→46.3)は一段と低下、雇用(51.6→49.2)も50を割れ、サプライヤー納期(50.1→48.6)は短縮、中間財投入を意味する購買品在庫(48.7→48.2)は微減であった。
このように、ISM製造業景況指数と同様、新規受注の弱さが懸念される。サービス業PMIが55.2と強さを維持していることに鑑みると、必ずしも内需の弱さが背景にあるわけではなさそうだが、11月5日の大統領選挙を控えた不透明感などから生産・投資活動が抑制されている可能性が指摘できる。
現在のS&P500種指数はかなり割高?
ISM製造業景況指数や製造業PMIといった製造業サーベイは、長期的に株価との連動性が強い。そこでS&P500種指数(前年比)とISM製造業景況指数を同じグラフに描いてみると、過去は基本的に連動していた。だが、直近1年程度は強い株価と弱いISMと言った具合に、明らかな違和感が認められている。
もしISM製造業が「絶対的に正しい」という前提を置くならば、現在のS&P500種指数は(ひいき目にみても)前年比伸び率がゼロ近傍、すなわち4300~4500ポイント程度の水準にあるはずであり、現行水準から25%程度の下落余地がある。
現在の株価は「マグニフィセントセブン」と呼ばれる時価総額の大きい非製造業によって牽引されていることを踏まえ、時価総額の大きい銘柄の影響を受けない「均等ウェイト版S&P500」と比較しても、やはり違和感は残存する。どちらの尺度でみても現在の株価は、製造業サーベイと整合しない高い水準にあり、不気味さを禁じえない。
では、そもそもなぜ、株価は製造業指標の悪化を無視するかのような水準にあるのだろうか。ひとことで言えば、「景気後退は回避できるし、もし景気後退が懸念される状況になれば、FRBが大胆な利下げに踏み切るので株価下落は大したものにならない」という楽観があるだろう。
求人件数の下抜けが懸念される状況に
もっとも「景気後退は回避できる」という点については、やや警戒が必要な状況になってきた。8月23日のジャクソンホール・シンポジウムでジェローム・パウエルFRB議長は「労働市場の一段の冷え込みは望みも歓迎もしない」と発言したばかりだが、前出の9月4日発表の7月JOLTS求人統計は明らかにFRBが「見たくない」データであったと思われる。
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