「米国株は大幅に下落、日本株も追随」となるのか 弱い製造業指標や求人件数急低下で高まる懸念
東洋経済オンライン / 2024年9月13日 11時0分
7月の求人件数は767万件と市場予想(810万件)を明確に下振れたうえ、6月の数値も791万件へと27万件も下方修正された。水準そのものは新型コロナウイルスの感染爆発前よりも高いが、この間の人口増を踏まえれば、決して多いとは言えない。
同時にFRBが重視する失業者1人あたりの求人件数は1.07へと急低下した。この数値は2022年3月に2.0を超え、求職者が引く手あまたの状況にあることを示したが、移民流入数の増加などによって労働供給が正常化するなかで、2024年4月には発生前の水準である1.22に回帰していた。
1.07という数値は、危険水域というほどではないものの、企業の採用意欲が減衰していることは明白であり、このところの低下速度から判断すると下抜けが懸念される状況にある。求人件数の低下基調と失業者数の増加基調が続いていることを踏まえると、求人倍率は早晩1を下回る公算が大きい。
このように労働者優位の状況が崩れつつある姿は同国の民間調査会社であるコンファレンス・ボードが発表する消費者信頼感調査における雇用判断DIの低下と整合的であり、広範な指標で弱さが確認されている。これらから判断すると、現在4.3%で推移している失業率が今後上昇していく可能性を意識せざるをえない。
米国株下落なら、FRBが「株式市場を助けにくる」?
その場合、米国株は弱気相場に移行するのだろうか。そこで重要になってくるのは「もし景気後退が懸念される状況になれば、FRBが大胆な利下げに踏み切る」という前提。その点、現在、利下げにあたって最大の障壁であるインフレがおおむね沈静化していることは極めて重要な事実であろう。
2021年に高値を付けたナスダック総合指数がその後、2022年に30%近い下落を経験したのは、「景気が悪化しているのにインフレが邪魔をするので利下げができない」という、ある意味「詰んだ」状態であったことが大きい。
それに対して現在のFRBはいつでも動ける状態にあり、政策対応余地は豊富にある。仮に株価が大幅下落となれば、FRBが「株式市場を助けにくる」のではないか。筆者は日本株が、米国株の下落に付き合わされる展開になる可能性は現時点では低いと考えている。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
藤代 宏一:第一生命経済研究所 主席エコノミスト
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