"新宿野戦病院"が「コロナ後生きる私達」に響く訳 脚本家の宮藤官九郎が伝えたいメッセージ
東洋経済オンライン / 2024年9月13日 12時0分
同時に、ヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)の立ち居振る舞いや精神性のすべては、次なる感染症による緊急事態が起きた際に、われわれがとるべき言動のひとつの見本を示した。
コロナ禍の教訓を得ていない社会へのメッセージ
そして、最終話では、ウイルスを克服して緊急事態宣言が解け、社会が再び平時に戻る過程が描かれた。
そこで映されたのは、コロナ禍のあとをそのままなぞっているかのようなギスギスした社会だ。
ネット空間では、自粛警察をはじめ、緊急事態宣言で時間を持て余す人が他人の粗探しをして攻撃する。攻撃された人は、またほかの誰かをターゲットにする。その繰り返しだ。緊急事態宣言が明けても、感染防止対策疲れなどで人々の心は荒み、マスクをしていないだけで人を責める。リアルの場でも人々の心はささくれだっている。
そこには、いまを生きるわれわれが、コロナ禍を経た教訓を何も得ていないというクドカンのメッセージがあるのではないだろうか。
毎年のように自然災害が発生するたびにSNSではデマが拡散され、それによる風評被害が起こる。ネットの炎上騒動は以前にもまして増えており、些細なことで謝罪に追い込まれる人が後を絶たない。誰もが正論を振りかざし、そこへの同調圧力が働く窮屈な社会は、よりひどくなっているとも感じられる。
それでいいのか。人間性が退化しているのではないか。そんな社会に対するクドカンの声が聞こえてくるようだった。
ウイルスがようやく収まり、人々が街にあふれて社会が通常化するのを喜ぶなか、歌舞伎町の雑居ビルのクラブで床崩落事故が発生し、多数のケガ人が聖まごころ病院に運ばれてくる。
第8話のコンセプトカフェ爆破事件のときと同じく、聖まごころ病院は大災害時の野戦病院と化した。そこで医師たちは、ウイルス感染防止対策も必要になるなか、トリアージを含めた緊急医療対応を完璧にこなす。
そこには、コロナ禍を経て次なる感染症が世の中を襲った場合を想定して備えをしていた医療従事者たちの冷静かつ適切な行動があった。コロナ禍のあとは、それ以前と変わらないことばかりではない。われわれの命や安全を支えてくれていた医療現場は、過去のすべてを糧にして前へ進んでいる。
それをわれわれはどう見て、何を感じるのかが問われている。
地域社会への前向きなメッセージ
新たなウイルスが再び世界中に蔓延したとき、本作で描かれたような差別や偏見による攻撃や風評被害もまた起こるかもしれない。
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