「太ると病気になる」という不安が招く深刻な弊害 幸福感を犠牲にした食生活では健康になれない
東洋経済オンライン / 2024年9月14日 16時0分
昨今、「肥満」による生活習慣病のリスクがしきりに強調されていますが、そうした恐怖感から日本人が陥っている、「太ったら病気になる、長生きできないぞ」という固定観念こそが、むしろ健康を損なう結果につながっていると、文教大学健康栄養学部教授の笠岡誠一氏は指摘します。
糖質制限などの過度なダイエットがからだにもたらす、深刻な悪影響とはいったいどんなものなのでしょうか。
※本稿は、笠岡氏の著書『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』から、一部を抜粋・編集してお届けします。
炭水化物を食べないと「エネルギー不足」に陥る
炭水化物が太る、あるいは、健康に悪いというイメージが広がったからでしょうか? 日本人の炭水化物の摂取量は年々減少しています。
主食であるお米の消費量は、ピークの1962年から半減。当時はひとり1日約2合のお米を食べていましたが、現在はその半分です。
その結果、何が起きているかというと、日本人は、栄養素の摂取バランスが崩れると同時に、危機的なエネルギー不足にも陥っているのです。
現在の日本人はこれだけ飽食の時代でありながら、1日の摂取エネルギー量は、戦後すぐと同程度にまで減少しています。エネルギー不足が、からだにどんな問題を引き起こすか解説していきましょう。
人間は、何もせずじっとしているときでも、心拍、呼吸、体温の維持などの生命活動を続けています。このとき使われるエネルギーを基礎代謝といいます。
炭水化物が不足していると、基礎代謝をはじめとするエネルギー消費を、生命活動に不可欠なたんぱく質などで賄わなくてはなりません。
現在の日本人は、炭水化物の摂取が激減している一方、その代わりに脂質の摂取量を増やすことで、なんとかエネルギーを確保し、命を存続させようとしているのです。
ダイエット目的で、炭水化物の摂取を減らして、さらに脂質の摂取も減らすと致命的なエネルギー不足になります。
基礎代謝を賄うためのエネルギーをからだの中にあるたんぱく質から作り出しますが、その際、さまざまな問題が生じてしまいます。
まず、自分の筋肉を分解してエネルギーを作り出すため、どんどん筋肉量が低下してしまいます。骨の約半分はたんぱく質(コラーゲン)です。エネルギーに使われてしまうと骨粗しょう症など骨の病気になる可能性も考えられます。
たんぱく質の分解物が血液の浄化装置、腎臓に負担をかけて、内臓疾患のリスクを高める可能性もあります。炭水化物や脂質を減らす代わりに、たんぱく質の摂取を極端に増やすことも、からだへ負担をかけることになるのです。
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