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新幹線開業以外も激変「福井の鉄道」60年の記憶 SLから私鉄新型車まで、撮り続ける故郷の列車

東洋経済オンライン / 2024年9月14日 7時0分

21世紀に入ってから進化を遂げたのは私鉄だ。福井はもともと私鉄2社が存在し、鉄道といえば私鉄文化の地域だが、近年は全国的に見てもローカル私鉄の活性化がとくに進んだ地域といっていいだろう。京福電鉄の越前本線・三国芦原線を2003年に引き継いだ第三セクターのえちぜん鉄道はアテンダントの乗務などで話題を呼び、ローカル線活性化の例として注目を浴びた。

さらに2006年には、福鉄がほぼすべての車両を路面電車タイプに置き換えるという大胆な施策を実行した。当時は驚いたが、LRTが脚光を浴びるようになった今から見るとこれは先見の明があった。2013年には低床車両の「FUKURAM(フクラム)」が登場し、2016年からはえちぜん鉄道と福鉄の相互直通運転も始まった。2023年には低床車両の新型として「FUKURAM LINER(フクラムライナー)」もデビューした。

地域の鉄道文化を守りたい

フクラムは福井の鉄道の新たな姿を示す存在であるとともに、カラフルな車体は被写体としても魅力がある。今、筆者が福井に行くと必ず訪れるのが福武線の三十八社付近だ。ここで四季折々の風景の中を走るフクラムの姿を撮るのが定番となっている。写真集の表紙に往年の車両でなくフクラムを選んだのも、福井の鉄道新時代を象徴する姿だと感じているためだ。

北陸新幹線の延伸も、1964年に東海道新幹線の試運転を撮影したのが鉄道写真家人生の始まりだった筆者にとっては、ちょうど60年後にふるさとの新幹線開業を見届けることができたのは感慨深い。だが、敦賀での乗り換えが今後も当分続くという課題を残す開業である。その点、手放しでは喜べない思いもある。

今、福井は新幹線を降りると駅前にフクラムのようなスマートな路面電車が停まっている街になった。60年前とは大きく姿を変えたが、伝統ある福井の鉄道の文化は引き継がれ、そして発展していると思う。乗務員不足での減便といった残念なニュースもある中、行政や各界のトップは鉄道が地域の重要な文化であることを認識し、今後も守るための努力を続けていってほしい。

南 正時:鉄道写真家

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