死亡した「27歳のペンギン」に生じた異変の正体 動物園の動物たちに起こっている「新たな問題」
東洋経済オンライン / 2024年9月15日 13時0分
ところで、多数のフンボルトペンギンの病理解剖を続けてきたぼくは、何となくですが「フンボルトペンギンの胃がんには高齢化とは別の発生因子があるかもしれない」と密かに予想しています。
胃がん、高齢化以外の要因も?
今のところ、その要因は2つ。1つは、彼らのエサに添加される「塩分」です。
本来、野生のフンボルトペンギンは、海水のある環境で生きています。しかし、日本の水族館や動物園ではフンボルトペンギンを淡水で飼っていることも少なくありません。また、餌の魚は冷凍されたものを解凍して与えています。
淡水飼育をはじめとするこのような飼育方法ではフンボルトペンギンの血液中のナトリウムが不足しますから、多くの場合、エサとして与えている魚に塩をまぶして食べさせているのですね。
実際、塩分が不足すると低ナトリウム血症になるペンギンもいますから、塩分の補給は重要です。反対に、誤って塩分を与えすぎてしまって高ナトリウム血症になってしまったペンギンを病理解剖したこともあります。
人間において、過剰な塩分摂取が胃がんを引き起こす要因になることは、多くの研究で明らかになっています。みなさんも、健康診断でお医者さんなどから「塩からいものは控えてください。血圧が上がるだけでなく胃がんになりやすくなりますよ」と聞いたことがあるかもしれません。
高濃度の塩分を含む食物を頻繁に摂取していると、胃の粘膜がダメージを受けて胃炎になり、発がん物質の影響を受けやすくなるとされています。
「それって、フンボルトペンギンでも同じじゃないのか?」
ぼくは密かにそのような仮説を立てています。
もちろんほ乳類である人間と鳥類であるペンギンでは生物として体にさまざまな差がありますし、ペンギンの塩分摂取量と胃がんの発生率の関係を調べた研究も見当たりません。しかし、ペンギンの体でも人間と同じような反応が起こっているのかもしれません。
また、たいていの飼育施設はエサの魚を解凍して丸のまま与えていますから、魚のヒレなどで胃の粘膜が傷つきやすくなっていて、塩分摂取も相まって胃がんの発生率を上げている可能性も考えられます。
もう1つが、遺伝的要因です。
今も水族館や動物園でたくさん飼われているので意外に思われるかもしれませんが、野生のフンボルトペンギンは絶滅が危ぶまれており、ワシントン条約(正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」)では「付属書Ⅰ」に掲載されています。
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