大国インドが中国のような独裁にならなかった訳 絶対的な強権支配が成立しにくかった土壌
東洋経済オンライン / 2024年9月16日 18時0分
インドの主要な政党を見ていきましょう。まずは現在の与党であるモディ首相のインド人民党(BJP)。人民党は、モディ首相の出身州であるグジャラート州をはじめとした北部で根強い支持があります。北部はヒンディー語話者が多く、ヒンドゥー教を重視する同党の主張が受け入れられやすい面があるのです。
「インド人民党は、経済はグローバル志向ですが、政策的にはナショナリズムが強い……というか、ヒンドゥー教至上主義とも言われます」
もしも私がインド人民党の人の前でこう説明したら、激しく否定されると思います。実際、2023年に訪米したモディ首相はジャーナリストからイスラム教弾圧を指摘され、「我々は民主主義国家であり、そんなことはあり得ない」と啖呵を切っていました。
モディ首相が断言するのは政治家として当然で、インドの憲法は世俗主義の原則に基づき、宗教と政治を切り離すように定めています。しかしインド人民党はヒンドゥー教に優しくイスラム教に厳しいのは事実ですし、他の政党も宗教の影響は多分に受けています。
たとえばモディ首相の政策で、社会的活動を行う多くのNGOが解散を命じられています。解散の理由の一つは、宗教。キリスト教やイスラム教がバックにある場合は、免許取り消し・解散になることが増えています(Economist2024年2月24日―3月1日)。
インド人民党に対抗しうる政党が、インド国民会議派(Indian National Congress)。インド人民党よりはリベラルな志向を持ちます。2つの政党が交代で政権をとっていたために、国民会議も財界との関係も深く、インドは「小さな政府か、大きな政府か」どちらを志向するか、一概には言えないところがあります。
いくつかの地域政党も存在する
広大な国土を誇るインドには、いくつかの地域政党もあります。「地域性が強く、言語も多数」というのはスイスやベルギーと似ていますが、彼らの多くは複数の言語を話します。しかしインドは国会でも通訳が必要な時もあるほどですから、それぞれの地方を代表する政治家が不可欠なのでしょう。
インド最大の商業都市ムンバイを抱えるマハーラーシュトラ州で強いのがシヴ・セーナー。ヒンドゥー教を重視する保守色が強い政党で、ムンバイの市政を担い、移民に対して厳しい姿勢を取っています。ムンバイは多くの日本企業が拠点を置いている地。排外的な政党が影響力を持っていることは知っておいたほうがよいでしょう。
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