株式市場にはびこる「配当」の思い込みと"横並び" アメリカの状況との比較から見えてくるもの
東洋経済オンライン / 2024年9月17日 15時0分
京都大学名誉教授で、同大学成長戦略本部・証券投資研究教育部門客員教授の川北英隆氏の新著『京都大学人気講義の教授が教える 個別株の教科書』より一部を抜粋・再編集し、株式投資の本質論について3回にわたって掲載しています。3回目の今回は投資の未経験者・初心者に対して、株式(個別株)の配当や値上がり益について解説しながら資産運用の本質をクローズアップする。
1回目:京大教授が説く「株式投資」シンプルかつ深い心得
2回目:「60年間」株式市場と付き合って得た"現実と事実"
一般投資家にとっての株式の魅力
株式には元金がなく金利もない。それでは、経営に直接影響を与えられない一般の株主にとって、何が魅力なのか。
【グラフで確認】アメリカでは、株式の配当が無配もしくはそれに近い企業が多い
基本は、株主が企業の所有者であることから生じる魅力である。
金銭的な魅力は、配当(企業が得た利益の分配)や値上がり益が得られることに尽きる(値下がり損もありえるが)。前者を「インカムゲイン」、後者を「キャピタルゲイン」と呼ぶことがよくある(下図)。
これに対し、株主優待(代表的には飲食の割引券、無料乗車パス)が魅力だとの主張もある。
その主張を否定はしないが、株主優待を目当てに株主になるのは本末転倒と考える。株式を買う本来の目的は、株主として企業の成長を、企業と一緒に楽しむことにある。
なお、債券の場合、金利がインカムゲインである。また債券の取引価格は株式と同様に変動するから(ただし変動幅は通常は株式よりも小さい)、その値動きによってキャピタルゲインも生じる。
では、株式の配当や値上がり益とは何であり、企業経営的にどのような意味があるのか。
実のところ、これを知ることが株式による資産運用の本質を知ることでもある。
配当とは、企業が「利益の一部を株主に支払う」ことである。ここでの利益とは税引き後の利益、すなわち当期純利益である。
当期純利益とは何なのか。会計的には、企業が1年という事業年度の間に稼いだ金額である。
では、この利益は誰のものなのか。企業のものであるのは当然なのだが、企業のオーナーは株主なのだから、当期純利益はオーナーである株主のものだといえる。
「配当」の思い込み
もう一度、問う。配当とは何か。
それは、企業経営者が「配当として支払うのが経営にとって適切だ」と判断し、株主に支払うものでしかない。債券(借金)に対する金利とは異なる。株主への約束を守る必要があるから支払われる性質のものではない。
そうだとすると、次の疑問が浮かぶ。
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