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株式市場にはびこる「配当」の思い込みと"横並び" アメリカの状況との比較から見えてくるもの

東洋経済オンライン / 2024年9月17日 15時0分

配当されなかった当期純利益の残りは何か。どう処理されるのか。配当されなかった残りは企業の内部に残る。これは内部留保と呼ばれる。では、何のために内部留保するのか。

企業の成長のために用いるのが本来の目的である(下図)。要するに、成長のための投資(その中心は設備投資やシステム投資)に使われるべきものである。

他社の事業を買い取り、さらには企業を買収するために使われることも多くなってきた。これも成長投資の一種であり、一から事業を立ち上げるよりも早いとの判断がある。

これに対し、銀行預金に積み上げるのは、正しい意味での内部留保とはいえない。

内部留保を用いて企業が成長すれば、将来の利益が大きくなり、配当として株主に支払われる金額も大きくなるだろう。

このように内部留保は本来、企業の所有者である株主に対して夢を与えてくれる。

別の角度から考えてみよう。配当と企業成長との関係である。

同じような当期純利益を稼いでいる2つの企業があったとして、株主にとって現時点での配当の多いA社のほうが望ましいのか、配当の少ないB社のほうがいいのか。

単純化すると、配当の少ないB社は内部留保が大きいから、成長のために使える金額が大きい。そうすると成長率も高くなり、何年か先にはA社よりも企業規模が大きくなっている。結論は、「株主にとってB社のほうが好ましい」となる。

現実はこのように単純ではないものの、真実の一端である。

これに対して次の疑問が浮かぶ。

今の日本の株式市場において配当が好まれているが(高配当株に投資する投資信託が多く設定されているなど)、この現実からすれば、先ほどの質問に対して、「A社のほうが好ましい」と答えるのが正しいのではないのか。

この疑問に対しては簡単に回答できる。「アメリカの株式市場を見るのがいい」と。

アマゾン、グーグル(上場企業名はアルファベット)、メタ(旧フェイスブック)は無配もしくは2023年まで無配だった。このうちアルファベットとメタは2024年になり、配当を開始した。

赤字決算だから無配なのではなく、成長投資に資金が必要だからという理由で配当をしていなかった。

AI(人工知能)向けの半導体で急成長しているエヌビディアは無配ではないものの、ほとんど無配と同じ程度の配当しかしていない。しかし投資家に人気がある。成長への期待が高いからである。

アメリカと異なり、日本の株式市場において投資家が配当を好む理由には、次の3つがありえよう。

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