「健康書2000冊」が導き出した"健康長寿"の結論 医学研究の最前線に躍り出た「注目の臓器」とは
東洋経済オンライン / 2024年9月17日 16時0分
その物質の名は「短鎖脂肪酸」。聞き慣れない言葉かもしれませんが、「短鎖脂肪酸」こそ、腸の多彩な働きのカギを握っている重要な物質です。少し、順序が逆になりましたが、大切な短鎖脂肪酸を作り出してくれる代表的な善玉菌の働きを確認しておきましょう。
●乳酸菌
乳酸を作る菌の総称。悪玉菌の増殖を抑制し、腸内環境を整えます。免疫機能を高める菌や、アレルギー症状を抑える菌も発見されています。
●ビフィズス菌
乳酸や酢酸を生成し、悪玉菌の増殖を抑制します。酢酸の強い抗菌作用により、大腸菌の増殖防止や食中毒菌の殺菌も期待できます。
●酪酸菌(酪酸産生菌)
酪酸を作る菌の総称。腸管上皮細胞の主要なエネルギー源となり、腸管バリア機能(腸の粘膜が外部からの有害物質の侵入を防ぐ機能)の維持や免疫応答の調節など、さまざまな生理機能に関わっています。
酪酸菌が「健康長寿」のカギをにぎっている
これらの善玉菌は、短鎖脂肪酸の生成に役立つ乳酸、酢酸や酪酸などの短
鎖脂肪酸をつくります。短鎖脂肪酸とは、炭素数が6以下の脂肪酸の総称で、代表的なものに酢酸、酪酸、プロピオン酸などがあります。短鎖脂肪酸は、腸研究の最先端の分野であり、現在進行形で研究が進んでいるところですが、現時点では次のような働きがあると言われています。
• 腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑制
• 腸内環境を整え、健康に保つ
• 腸の運動を助けるエネルギー源となる
• 腸の運動を活発にし、便通を改善する
• ビタミンの合成を促進
• 腸管バリア機能の維持・強化
• 免疫細胞の増加を促進
• 肥満・老化の防止に役立つ
• がん・糖尿病・動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果
• 健康寿命の延伸に寄与
腸内細菌研究の第一人者、京都府立医科大学の内藤裕二教授らが行った京都府の京丹後市の高齢者を対象とした調査では、100歳以上で元気な健康長寿者の腸内ではビフィズス菌と酪酸菌が多く、特に酪酸菌が多いことが明らかになりました。
酪酸菌がつくる酪酸は、大腸の粘膜細胞のエネルギー源となります。
そのほか、炎症を抑えたり、腸管バリア機能を高めたりと、多岐にわたる健康効果が注目されています。
内藤先生は、酪酸菌を増やすことが健康長寿の秘訣の1つだと述べています。
短鎖脂肪酸の働きについては、まだ研究途上の部分も多いですが、健康長寿との関連を示すデータは着実に増えています。
今後、短鎖脂肪酸を介した腸内細菌と健康の関係性が、さらに解明されていくことでしょう。
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