ジャニの常識覆す「タイプロ」異例ヒットの背景 「ジャニーズなき世界」で前代未聞オーディションの全容
東洋経済オンライン / 2024年9月18日 10時0分
さらに、これはジュニアのオーディションではなく、いきなりtimeleszという人気グループのメンバーになる者を探す試みだ。それは、timeleszの仲間探しとしての意味も持ち、本人たち主導で行われる。数あるオーディション番組の中でも、メンバー本人が選考に関わるのはなかなかないことである。
ただ、かなり革新的なことをしている一方で、実は、旧事務所から受け継いでいる魂のようなものも随所に感じることができる。それが特に顕著に表れるのが、彼らが人を選ぶときの基準である。
“ダンスがうまい候補者”は逆に浮いている
筆者は拙著『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)で、ジャニーズの選考基準は「やる気と人間性」であるとし、その詳細を描写した。その2つがあれば、最初は歌やダンスが未経験の少年たちでも、ジャニーズアイドルとして輝けるようになっていくというのが主張の骨子である。
オーディション番組といえば、参加者がルックスやスキルを争うもの、と思う方も多いだろう。だが、現状、この番組の中では、ほとんどスキルやルックスの話が出てこない。では、メンバーは候補者の何を見ているのだろうか。
今回のオーディションで見ているものとして、菊池風磨は「想いの強さ」を挙げる。「強い想いがあればパフォーマンスもスキルも顔つきも全然変わると思うので」と番組内でその理由を述べている。
ここでの「想いの強さ」とは「やる気」と言い換えてもよいものだろう。予告の時点で話題になっていた、歌詞を忘れた候補者に対して「歌詞忘れてるようじゃ無理か。歌詞はね、入れとかないと」とぶった斬った場面は、やる気のなさに呆れてのものだろう。
ただ、重要なのは、候補生が“できない”ことに呆れているのではなく“やろうとしなかった”ことに呆れているという点である。
実はジャニーズにおいて、“もともとできる”ことはさして重要なことではない。メンバーの松島聡は「僕自身、事務所に入るまで歌もダンスも経験がなかったわけで、これから本気になって頑張れば絶対身につくはずだから」と語っている(『anan』2024年9月18日号)。
松島に限らず、未経験の少年たちが、入所後にどんどんとスキルを身につけて輝いていく様子を、ジャニオタたちは多く目に焼き付けてきたはずだ。
今回のオーディションでも、正直、ダンスがうまい候補者は逆に浮いている印象さえあり、スキルが唯一絶対の基準ではないことが透けて見える。
空気が凍った場面
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