あの「ポーター」が人気商品を大胆に変えた裏側 価格2倍にしても素材変えた吉田カバンの挑戦
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 13時0分
企業を取り巻く環境が激変する中、経営の大きなよりどころとなるのが、その企業の個性や独自性といった、いわゆる「らしさ」です。ただ、その企業の「らしさ」は感覚的に養われていることが多く、社員でも言葉にして説明するのが難しいケースがあります。
いったい「らしさ」とは何なのか、それをどうやって担保しているのか。ブランドビジネスに精通するジャーナリストの川島蓉子さんが迫る連載、第19回は、吉田カバンを取り上げます。
リニューアルで価格が約2倍に
出張で大阪に向かおうと品川駅を歩いていたら、エキナカにある「PORTER(ポーター)」のショップに目が留まった。こっくりしたアイアンブルーのカバンは、見たことがないラインナップ。聞いてみると、人気シリーズの1つ「TANKER(タンカー)」の新商品で、100%植物由来のナイロンを使ったものだという。
【写真で見る】どんなデザイン?誕生から40周年を迎えてリニューアルをしたポーターの人気ライン「タンカー」
【写真】ホテルを彷彿とさせるポーター表参道店。店内を入ると、すぐにタンカーがずらりと並べられている。創業者の写真や修理コーナーも(19枚)
今やポーターは国内外で広く認知され、多くのファンがついているブランド。シリーズの1つであるタンカーは、アメリカ空軍のフライトジャケット「MA-1」をモチーフとして1983年に生まれたものだ。
ナイロン素材の間にポリエステル綿が入っていて、軽くて丈夫な機能性を持ち、見た目にも使い心地にもハード過ぎない優しさがある。裏地は鮮やかなオレンジ色で、ブランドのアイコン的存在にもなっている。
タンカーは今年5月に、従来使っていたナイロンの使用をやめ、植物由来のナイロンに替えたのに加え、細部にわたるリニューアルを行った。価格が約2倍になったものの、従来のお客に加え、新しい層の獲得も含め、予想を上回る成果を上げているという。
見た目で100%植物由来のナイロンとわかるわけではない。が、石油由来ではない素材開発に挑戦し、世界で初めて量産化に成功したというストーリーが伝わり、確かな成果を生み出しているのだ。
吉田カバンらしさは、そこにどう働いていたのかーー。4代目社長を務める吉田幸裕さんの話を聞いた。
「変わることで前に進む」
タンカーのリニューアルプロジェクトは、コロナ禍の2021年頃からスタートし、シリーズ40周年を前にし本質的な価値を考えようというところから始まった。「変わらずにいれば、いずれ衰退していく。変わることで前に進んでいくことを忘れてはいけないと思うのです」(吉田さん)。
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