「アメリカだけに頼れない」韓国で広がる核武装論 日韓同時の核武装を訴える書籍が日本でも出版
東洋経済オンライン / 2024年9月21日 9時0分
2023年7月19日、韓国の釜山に停泊中の弾道ミサイル潜水艦ケンタッキー。アメリカが核弾道ミサイルを発射できる潜水艦を約40年ぶりに韓国の港に寄港させたが、これはアメリカによる韓国への拡大抑止強化の一環だ(写真・ 2023 Bloomberg Finance LP)
「韓国の核武装は時間の問題、早ければ10年以内、遅くとも20年以内」。韓国独自の核武装を提唱し、その世論・国際的支持獲得をリードする書籍が日本でも翻訳出版された。
筆者は鄭成長(チョン・ソンジャン)氏。韓国のシンクタンク世宗研究所朝鮮半島戦略センター長を務める、著名な北朝鮮問題専門家だ。鄭氏は日本での著書出版にあたり、日本の核武装も提唱している。その真意はどこにあるのか。
今回日本で出版されたのは『日韓同時核武装の衝撃』(姜英之訳、ビジネス社)。韓国語による原題は『なぜわれわれは核保有国にならなければならないのか』とタイトルがつけられている。
核武装論が支持される理由
韓国は日本同様、アメリカの核の傘に入る一国だが、この数年、韓国は独自に核武装すべきという「核武装論」がじわりと広がっている。各種世論調査で「韓国が核武装すべきか」という質問に対し回答者の50~70%が「核武装すべき」と答えるなど、核武装論はいまや無視できない数字だ。
鄭氏は韓国が核武装を積極的に考慮しなければならない理由を、次のように述べる。
〈もし北朝鮮が米国および韓国との非核化交渉のテーブルにつき、核放棄と国際社会の制裁の緩和、米朝関係の正常化、平和協定などを取り引きする案について真剣に議論する意思があるのなら、韓国があえて核保有を推進する理由はないだろう(…)しかし北朝鮮はもはや米国と非核化問題に関して論議せず、むしろ核弾頭を幾何学級数的に増やすという立場だ。したがって、非核化交渉の再開を期待するのは非常に現実的だ。〉(31ページ)
鄭氏の現状認識は正確だ。北朝鮮は2023年末から現在に至るまで、韓国を敵国とみなす発言を繰り返している。一方で、アメリカとの交渉も拒否し続けている。
2019年2月、ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が決裂して以降、北朝鮮はアメリカとの関係正常化よりは、それまで進めてきた核開発の完成を急ピッチで進めるようになった。北朝鮮の最高指導者・金正恩総書記をはじめとする北朝鮮首脳部には現在、「非核化」という文字はないように見える。
一方で、韓国の尹錫悦大統領をはじめ現政権には核武装という考えは希薄であり、アメリカとの同盟関係を中心に、日本とも協力しながら抑止力を強化する方針を採っている。
2023年4月の米韓首脳会談で発表された「ワシントン宣言」のように、核兵器搭載可能な原子力潜水艦の韓国への寄港などをはじめとする「核の傘」の強化こそ、北朝鮮への抑止力になるとの考えを崩していない。
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