「しにくい」を「しやすい」に変えるたった一つの技 車もイスも「ステイタス」だけで選ばれなくなった
東洋経済オンライン / 2024年9月22日 19時0分
トヨタには役員向けの車として「センチュリー」という車種があったが、これは運転手に運転させるタイプの車だ。トヨタとしても歯がゆい思いだったに違いない。
そこで、1989年に「セルシオ」という「クラウン」より上位ランクの車を作った。さらに高級車ブランドはトヨタと分けて「レクサス」と名づけてハイグレードなブランドイメージを獲得。結果、役員クラスの人でもトヨタグループの車を「選びやすい」状況を作ることに成功したわけだ。
「ステイタス」より「ライフスタイル」で
しかし、車の選び方も最近では大きく変わってきている。「ステイタス」より「ライフスタイル」に合わせて分けられているほうが、ユーザーはしっくりくるし、選びやすくなったのだ。
町中での足として使う人はコンパクトな車(トヨタでいうと「アクア」など)、ファミリー向けの生活を大切にする人はミニバンの車(「ノア」など)、アウトドア派の人にはSUVの車(「ランドクルーザー」など)、といった具合だ。
また、今の若い世代の人たちは車を持たないことも当たり前になっている。昔はかっこいい車に乗って女性にモテたいという男性が多かったが、今の若い世代の人たちはあまりそのようには考えない。むしろ、1台の車を時間で分けて使う「カーシェア」のほうが、車を手軽に「使いやすい」と考える人も増えている。
このように車の選び方にも、「役職に合わせて選ぶ」→「ライフスタイルに合わせて選ぶ」→「利用する時間に合わせて選ぶ」という変化が起こってきた。
もしも、作り手が時代を見誤って分け方を間違えてしまうと、その商品は消費者にとって「選びにくい」「買いにくい」ものになってしまうだろう。
車と同じように、オフィスのイスも昔は「ステイタス」を分けるシンボルだった。一般社員は「ひじなしイス」、課長になると「ひじつきイス」、部長になると「背もたれが高いイス」になる。さらに、役員になると「革張りイス」が与えられる。イスを手配する総務の担当者も、役職がイスのグレードを決めるわかりやすい指標だったわけだ。
オフィス家具を提供しているコクヨ(ご存じない方もいるかもしれないが、コクヨは文具以外にオフィス家具メーカーとしても知られている会社である)としては、まことにありがたい話で、お客様から毎年「課長が増えたので、ひじつきのイスを5脚手配してくれるかな」といった注文があったものだ。
「ステイタス」から「働き方のちがい」へ
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