進化したJR四国の振子特急、2700系「南風」の実力 出力も設備もランクアップした最新の気動車
東洋経済オンライン / 2024年9月24日 7時0分
各車2台装備するエンジンは、1基あたり331kWで馬力の数値は450PS。2000系(330PS)の1.36倍、N2000系(350PS)の1.28倍という高出力だ。このエンジンのパワーアップにより発車時の加速が一段と鋭くなっており、平坦線ではわずか60秒で時速100kmに到達する。高速域の加減速の反応もひとしおで、新幹線接続列車として必須の定時ダイヤの維持に貢献している。県境のトンネル内の直線はすかさず時速100kmオーバーに持ち込む。下り勾配は排気ブレーキが唸る。
その一方、最新の振子車両であるJR西日本の新型「やくも」273系は、曲線進入進出時の振子動作のズレを完全に解消する「次世代振子システム」を採用したが、誕生が5年早い四国の2700系は従来タイプの制御付き自然振子である。双方ともの開発者である鉄道総研によると、2700系を製造した当時、次世代振子は残念ながらまだ最後の課題をクリアできていなかったためであるそう。
進行右手眼下に吉野川を挟む街を見下ろしながら箸蔵を通過。「しまんと4号・南風4号」の5両編成が運転停車していたが、こちらは速度を下げない。振子と合わせた高速化メニューの中で多くの駅を一線スルーにしているので、ともすれば駅通過に気付かぬほどスムーズだ。
急勾配を迂回するU字ルートの底で吉野川を渡って徳島線合流の佃を通過。しばし高速を蘇らせてから一気に減速すると、阿波池田に到着する。ホーム対面に徳島行き特急「剣山4号」が待っている。4分接続の見事なダイヤだ。
東西にゆったり流れる吉野川が南北に向きを変えると、いよいよ中流域の四国山地横断区間。急流が飛沫を上げる小歩危から大歩危へと峡谷の車窓が続く。「南風1号」での通過時間帯はまだ早いが、日中になればラフティングのゴムボートも見られる。窓に額を近づければ、尾根付近まで農家が点在する険しい山村風景が広がる。
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大歩危に到着すると「きいろいアンパンマン列車」と行き違った。祖谷渓への観光拠点でもあるが、駅としては駅員無配置である。次の停車駅は吉野川の本流から分かれた大杉。列車は5両だが、それでも1号車はホームにかからずドア締め切りとなる。
深い山中のこと、トンネルが多く、駅間では外でもスマホが「圏外」を表示する。だから2000系の時代までは車内のネット環境も芳しくなかったが、新型の2600系・2700系においては登録制でフリーWi-Fiが利用できる。ただ、“サクサク”動作する…とは言いがたい。
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