「アレルギー患者」増加の一方で専門医不足の謎 「僅か2.5%」内科医に占めるアレルギー専門医
東洋経済オンライン / 2024年9月26日 10時1分
ところが、それらは、アレルギー、とくに即時型アレルギーとは関係の乏しい抗体を調べるものなのです。不安に思ったらまずはアレルギー専門医を探して受診・相談してみてください(日本アレルギー学会のサイトから日本アレルギー学会専門医・指導医一覧をご確認いただけます)。
不用意に行った検査で何十項目も「陽性」と引っ掛かり、結果に絶望してしまう患者さんもいることが問題です。食物アレルギーの場合、誤った検査結果を基に何も食べなくなってしまう患者さんもいます。ですから、正確な医学知識をベースにした本が普及することは、すごくいいことだと思います。
アレルギーは、稀なアナフィラキシーショックによる死亡を除けば、がん、糖尿病、生活習慣病などと違って、人の寿命を短くする力はそこまで強くありませんが、QOL(人生や生活の質)が落ちる病気です。
しかし、国や社会によるアレルギーに対する対策が十分かと言われれば、まだ多くの患者さんにとって満足のいく状況とは言えません。また、他の主要な疾患と比べて、アレルギー疾患に関連した公的研究費の充当は豊富ではなく、研究者たちにとっては悩みの種です。
疫学上はメジャーな疾患の割には、内科ではマイナーな存在として扱われている感があり、興味を持って研究、診療、教育に取り組んでもらえる仲間を私たちは増やそうと努めています。
性的マイノリティや、宗教上のマイノリティなどは注目されますが、何でも食べられる子供がいる一方で、アレルギー対策のためにお弁当を持ってこなければならないという疾病マイノリティもあるわけです。
修学旅行に行っても、その子はご当地のものが食べられない。本当に可哀そうです。解決してあげたいと思いますよね。不公平さを減らすという点においても、アレルギーの研究や診療技能が向上して病態の解明や創薬が推進されていかねばなりません。
「AED」同様に「エピペン」の普及を
日本アレルギー学会としては、「エピペン」などアドレナリンの自己注射液の正しい使い方の教育・普及、アレルギーについて詳しい医療スタッフの教育や診療技能の訓練などに取り組んでいるところです。
「AED(自動体外式除細動器)」はかなり普及しました。一般の方でも、救命講習を受けると、「AED」の使い方も習います。しかし、アナフィラキシーショックを起こした人への「エピペン」の使い方や同病態への緊急対処法は習いません。
「エピペン」は医師から処方されていても、アナフィラキシーショックの発症時に怖くて使えない人や、タイミングを逸して打てない人が少なくありません。万が一、バイスタンダー(その場に居合わせた人)としてアナフィラキシーを起こした人と遭遇しても、救命講習などでトレーニングを受けていれば、患者を助けられるようになるのではないかと思っています。
究極的には使用者を限定する形式で「AED」同様に「エピペン」が地域に配備され、一人でも減らせないかと望んでいます。
鈴木 慎太郎:医師・医学博士
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