1缶298円「未来のレモンサワー」脱安値化の適否 100円台のRTD市場に、アサヒの新戦力は定着?
東洋経済オンライン / 2024年9月27日 10時0分
例えば、現在のRTD市場を牽引するサントリーは2019年に「カロリ。」というカロリーオフが売りだった商品を「マーケティング上の理由」で終売。
2013年にはイギリスのロックバンドであるザ・ローリング・ストーンズのベロのロゴ「Lips&Tongue(リップスアンドタン)」をあしらった「ストーンズバー」という栄養ドリンク風味のカクテルを、なぜか若者向けに展開。案の定、目標の半分も売れず、翌年シリーズは打ち止めとなった。
そして、缶ではないが、モルソン・クアーズ・ジャパンの「ZIMA」は2021年に日本から撤退していた。かつては「若者の酒」というイメージだったが、この時期に撤退したのは完全にストロング系に押し負けたことを意味する(2023年に白鶴酒造が独占輸入販売契約を取得し、販売再開)。
そして、アサヒビールのストロング系といえば「もぎたてまるごと 搾りレモン」「ハイリキ9」「スパークス」などがあったが、日本初のチューハイブランド「ハイリキ」を守るためなのか、アルコール度数を7%に戻して、味もプレーンとレモンを残しただけで、ほかは淘汰されてしまった。
なお、現在の同社の主力RTDは「贅沢搾り」「樽ハイ倶楽部」「ザ・レモンクラフト」だが、他社製品と比べると、売れ筋商品とは到底いえない。ハイリキと贅沢搾り以外、これまで同社で売れたRTDはないのだ。
そのような懸念点もあるため、未来のレモンサワーの定着化には疑問符がつく。こんな言い方をすると元も子もないが、ストロング系に限らず、RTDは安いに越したことはない。もう誰も「現実逃避」のために、ストロング系は飲んでいないと思うが、それでも298円出して缶のレモンサワーを飲める者たちはきっと居酒屋に行くだろう。
SNS上では「ディストピア感」が話題に
もちろん、それ以上の満足度を得られるのであれば、未来のレモンサワーの定番化もなくはないだろう。同商品が技術を応用したアサヒスーパードライ 生ジョッキ缶と比較して考えてみよう。
アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶は従来のビールよりもほんの少し量が少ないとはいえ340mlで231円、500mlで302円と、同社が販売しているビールと値段はほとんど同じだ。この値段設定だからこそ、一過性のものではなく、今もしっかり定番商品として生き残っているのだ。
また、未来のレモンサワーは人気が出た当初、その見た目と名前のせいで「ディストピアの娯楽」とSNS上で揶揄されてしまった。というのも、缶の中に薄くスライスしたレモンが入っていることが逆に、SF映画などでよく見かける、文明が崩壊した近未来に配給される、見栄えの悪い無機質なワンプレートに付属する飲み物に見えるというのだ。しかも「未来」という名前もそこに拍車をかけている。
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