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岸田政権が国連演説で見せた「政治的リアリズム」 したたかに「アメリカの弱体化」を見越していた

東洋経済オンライン / 2024年9月28日 18時0分

「日本の独自外交」は、意外と冷静に方向性を修正しているという(写真:ninisan/PIXTA)

「ウクライナやイスラエルで紛争が起こっている今、日本の最大のミッションは東アジアに紛争を飛び火させないこと」。そう語る元外務省主任分析官の佐藤優氏が、11月に行われるアメリカ大統領選挙の結果が日本に及ぼす影響と、その影響を最小限でしのぐための備えについて解説します。

※本稿は、佐藤氏の著書『佐藤優の特別講義 戦争と有事』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

ハリスとトランプ、どちらが当選しても変わらない

「彼(トランプ大統領)は馬鹿野郎だ。彼に何かを説明するなんて意味が無い。常軌を逸している。我々はクレージータウンの中にいる。私は我々がなぜここにいるのかさえわからなくなる。これまででこんなにひどい仕事を経験したことはない」

という言葉が、ジャーナリストの立岩陽一郎の『トランプ報道のフェイクとファクト』に書かれています。これはトランプ政権下で大統領首席補佐官を務めたジョン・フランシス・ケリーがある会議で語ったものです。

この発言からもわかるように、多くの人々がトランプを常識はずれで危険な人物とみなしており、トランプ自身も実際に多くの奇行を行っています。それゆえ、「もしトラ(トランプが大統領選で勝利すること)」が実現すると、日本、韓国、北朝鮮、中国のパワーバランスに大きく変化があると考えられています。しかし、もしトラ現象は短期と中長期で分けて見る必要があると思います。

まず中長期的には、「もしトラ」になっても、民主党政権が続いても、大きな違いはないはずで、アメリカは自国中心主義(アメリカ・ファースト)にどんどんなっていくと考えられます。

ただ、短期的には、トランプになったほうがそのプロセスがよく見えて、アメリカ・ファーストはわかりやすく加速化するでしょう。ですから、むしろ私はトランプが大統領になったほうがいいと思っています。

トランプはバイデンやカマラ・ハリスと違って、民主主義を守るなどというイデオロギーをかざすことなく、労働者階級の仕事の確保と、自国中心主義を打ち出すので、短期的にはアメリカの政治は大きく変化します。ただし、民主党も中長期的には、結局トランプの目指した方向に向かうと思います。

とにかく日本にとっては、アメリカの自国中心主義から生じそうな問題を早く明らかにして、対処をしたほうがいいことはたしかです。

そうした対処を怠ることは、「健康診断は義務ではないから拒否することができる」と言って、いつまでも健康診断を受けない人が会社にいるのと同じです。

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