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「シカを家族で解体」横浜の住宅街で野性的生活 都会の住宅街でも自分の力で暮らす家族の日常

東洋経済オンライン / 2024年9月28日 16時0分

(写真:金土日曜/PIXTA)

住まいに自ら手を加え、狩猟で手に入れた獲物を自分でさばいて食べ、季節ごとにやってくる動物たちを見守りながら暮らす……といった自力での生活は、憧れはするものの、多くの人にとっては、簡単なことではありません。ですがそんな生活を、住宅街のど真ん中で、ずっと続けてきた家族がいます。

イラストレーターの服部小雪さんの夫は、サバイバル登山家として知られる服部文祥さん。長期の登山を行い、都会の自宅でもできる限り自分の力で暮らす文祥さんの「自力生活」が「日常」であった小雪さん、そして3人の子どもたち。

そんな服部家の暮らしの一部を、服部小雪著『はっとりさんちの野性な毎日』から抜粋して、紹介します。

住宅街の中にあるゲタの家

どうにか住み慣れた横浜の市内で良い物件はないだろうか。できれば中古戸建てを購入して、好きなように直しながら住みたいと思ったのは、子どもが3人になって数年経ってからのことだった。

【イラスト】運び込まれたシカを解体する様子

中古物件でさえ、この辺りに住むには驚くほどのお金がかかる。私たちが不動産屋に提示した予算は3000万円以下だったので、鼻で笑われ(たように感じ)、 次々と難がある物件を紹介された。

不動産屋の元気なお兄さん、Oクンが連れて行ってくれたのは、平屋から徒歩10分ほど離れた、丘の上の住宅街だった。

丘の斜面に、古家が4本足で乗っかっていた。ベランダの鉄のハシゴ階段をカン、カン、カンと降りてうっそうとした斜面に立つと、4本のコンクリートの柱が家の基礎を支えていることが分かった。基礎の部分と斜面の間には人が背をかがめて歩けるくらいの空洞がある。「この家、浮いてるよー?」。こんなあぶなっかしい家に住む人いるの、という気持ちで私は嘲(わら)った。

ところが文祥は、傾斜地ではあるけれど、自由に使える80坪の土地(しかも宅地ではないのでタダ)がついていることに魅力を感じたようだ。購入を前提で、早速子供たちと泊まりに行ったりして盛り上がっている。まさか、いかにも売れ残っていたふうの、この問題物件に住むことになるのだろうか?

とりあえず、耐震診断をお願いしてみた。専門家のおじさんが来て、耐震工事をすれば家屋はぺっちゃんこにはならないだろう、モルタルの土台が折れるような大地震のときは、この斜面ごと崩れるんじゃないですか、と真顔で言った。

「資産価値はゼロですね。あとは、人それぞれの考え方ですから」

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