フランス新首相の就任はEU瓦解への前奏曲だ 「民主主義を守る」戦争を止められないNATOとEUの限界
東洋経済オンライン / 2024年9月28日 9時0分
欧州議会選挙、イギリス下院選挙、フランス国民議会選挙、ドイツの州議会選挙などで、起こっている政権党への批判票は、こうした怒りの発露ともいえる。
過度な自由主義、国際化にうんざりする欧州
政権党は「極右の台頭」などと騒ぐが、欧州の国民が行きすぎた自由主義やグローバリゼーション、戦争にうんざりしていることは、紛れもない事実である。
民主主義と人権を守る戦いというイデオロギーなどよりも、胃の腑の欲望を満たすほうが、国民にとって重要であることは、当然である。政権党は民主主義と全体主義というイデオロギー闘争を前面に出しているが、国民にはそれ以上に日常生活のほうが大事になっているのである。
こうした結果、イギリス下院議会選挙では労働党が政権をとり、フランス国民議会選挙では、非政権党が多数を占め、ドイツ州議会選挙では軒並みAfD(ドイツのための選択肢党)が票を伸ばしている。
これらの政党は「戦争反対、移民反対」という公約を掲げている。移民も、欧州以外での戦争からもたらされた点では、戦争反対こそ問題の中心かもしれない。
その結果、政権が変わり、戦争終結、移民制限も間近に迫るはずであったのだが、いっこうにそうなる気配はない。それは、政権をたとえこれらの新しい党が握ったとしても、その背後にあるディープ・ステートが国民の意思を反映させないからだ。
イギリスの新首相キア・スターマーは、労働党の党首だが、かつての党首トニー・ブレアの再来のような人物で、保守党の政策の多くを共有している。戦争に関しては、ボリス・ジョンソンと変わらないか、それ以上の推進派かもしれない。これでは労働党の政権奪取を喜ぶことはできない。
最も悲惨な国がフランスであろう。フランスは、この2カ月首相不在が続いていた。その理由は、大統領を支持する政権党が、国民議会選挙で敗北したからである。そもそもEU議会でも敗戦しており、都合2回敗北したといっていいかもしれない。
フランスの首相がようやく決まったが…
支持を失ったマクロンは、対立する非政権党から首相を決めざるをえない状況になっていたのである。だから、首相選びは難航した。
そして9月になり、マクロンはなんと共和党のベテラン議員でもあるミシェル・バルニエを首相にした。これは青天の霹靂であった。共和党といえばかつての強力な党であるが、今では力をもっていない。だからこそ、第三者ということだったのだが、マクロン支持の政党であることは間違いない。
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