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フランス新首相の就任はEU瓦解への前奏曲だ 「民主主義を守る」戦争を止められないNATOとEUの限界

東洋経済オンライン / 2024年9月28日 9時0分

となると、マクロン政権は大統領を辞めない限り、どんなに選挙で敗れても国家を自由に操れることになる。1995~2007年のシラク政権時、EU憲法にフランス国民の多数が反対した国民主権喪失の問題が、今まさにフランス国民にくさびを打ち込もうとしているのだ。それは国民主権の危機といってもよい。

調停役と称しているバルニエが、極左、極右政党と政権党の間をかいくぐりながら、問題を丸く収めるだろうという期待とは裏腹に、民主主義の危機を招いているのである。

こうした民主主義のねじれの問題は、フランスだけにとどまらない。国民の支持を得た政権党が、EUで国民の意思をないがしろにされればEU離脱は避けられず、EU自体の存続の危機となるからである。

ウクライナ戦争支援、すなわちNATOの武器支援の問題において、多くのEU国民が巻き込まれるのではないかと不安を持つ中、EUそして多くの政権党は積極的支援策を打ち出してきた。その理由は「民主主義を守る」ということにあった。

民主主義が瓦解しているEU

ところが、その民主主義がEU内で足下から崩れつつあるのだ。では各国の政権党のみならず、EUを動かしているものは何なのか。それがグローバリゼーションと新自由主義である。そしてそれが、EU内での経済停滞の深刻さと相まって、各国の国民の不満を引き出しているのである。

NATOはEUだけのものではない。EUは政治的には独立していても、軍事的にはNATOに従属している。防衛という点で見れば、判断はEUだけでなくNATOに握られているといってよい。

EUの各国民は、EUという超国家的な機構によって主権を奪われているだけでなく、NATOという軍事機構によって主権を奪われているともいえる。

NATOは、西側諸国の軍事機構である。その機構は西側の資本主義経済を守る軍事機構であるといってよい。それが民主主義の拡大と称して、世界に侵攻する限り、それ以外の諸国との摩擦と戦争は避けられない。

そうなると、各国の国民には、もはやこの戦争は止められないのではないかという不安がよぎる。戦争を遂行し続けるものは、国民の上、さらにはEUの上にある機構であれば、この戦争は資本主義経済、西側経済を守るための、国民不在の永久戦争ということにもなりかねない。

しかもその戦争を正当化するスローガンが「民主主義を守る」ためというのだから、ブラックユーモアとしかいいようのない現状なのである。

的場 昭弘:神奈川大学 名誉教授

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