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難病ALS待望の「新薬」医師が乗り越えた"高い壁" 一度申請を取り消された薬が承認となった背景

東洋経済オンライン / 2024年9月28日 9時0分

徳島大学の記者会見の様子(和泉唯信医師提供の画像より)

病気の進行を抑制する薬が承認

ついに神経難病のALS患者さんにとって待望の薬が承認された。

【写真で見る】承認されたばかりのロゼバラミン。「医師主導治験」で早期ALSの進行を遅らせることが確かめられた

9月24日に厚生労働省から発表されたのは、メコバラミン(商品名:ロゼバラミン、以下、ロゼバラミン)という薬で、病気の進行を抑制することが期待できるという。治験を行った結果、進行を500日ほど遅らせるという、優れた結果が徳島大学から報告されていた。

ALSとは筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis)といい、平均3~5年で亡くなったり、人工呼吸器の装着が必要になったりする神経の難病だ。日本には約1万人の患者さんがいると推定されている。

ロゼバラミンは8月26日の同省が実施する専門部会の議論で専門家の支持が得られ、承認が確実視されていた。そして、このたび無事に開発元のエーザイに製造、販売が認められた。

ロゼバラミンは、メチコバールというビタミンB12誘導体製剤の有効成分 の用量を多めにした薬だ。メチコバールは以前から神経の病気に多用されているもので、神経の専門家でなくても、医師であれば、処方した経験がある人はとても多い。

かくいう筆者も(処方数は多くないほうであるが)、何度か処方している。言葉は悪いけれど、今ひとつ効きが良いとはいえず、末梢の神経障害などで苦しむ患者さんに「出すとしたらこれくらい」ということで出すことも、なくはない薬である。少なくともそういう面はあった。

ロゼバラミンとはどういう薬か

今回、承認されたロゼバラミンは、通常用量が500マイクログラムのメチコバールの100倍にあたる、50ミリグラムの高用量の有効成分が入っていて、以前からALSに対する効果が期待されていた。

実際、発売元のエーザイは2015年に一度、この薬の承認申請をしている。なんと、さかのぼること9年も前の話である。

残念ながら、このときは、進行抑制の効果が十分に証明されないということで承認は見送られてしまったが、この薬が、“早期のALSの進行抑制”に期待できるとして、いわゆる「リポジショニング」の薬として申請されたのだ。リポジショニングとは、すでに承認され、使用されている薬を、元々の使い方と異なる使用法で申請し直すことを指す。

こうしてリポジショニングとして復活したロゼバラミンは、ALSという人類にとっては向かうべき強敵への有効な武器となったといえる。

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