1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「踊る大捜査線」新作公開が示す刑事ドラマの悲喜 新作映画公開&過去作一挙放送から何が読み取れるか

東洋経済オンライン / 2024年9月28日 20時0分

ここまでの話を整理すると、君塚さんが「舞台、主人公のキャラクター、事件解決の流れなどをそれまで放送されてきた刑事ドラマとは異なるものにした」こと。

しかも、それが奇抜なものではなく、リアリティを感じさせ、自分に置き換えて感情移入しやすいものだったこと。これらが数ある刑事ドラマの中で「踊る」を国民的ヒット作にした理由の1つでしょう。

さらに君塚さんは、「太陽にほえろ!」(日本テレビ系)などをはじめとする刑事ドラマでよく見られた、刑事の呼び名、カーチェイス、銃撃戦、犯人に情けをかけるなどの定番シーンをことごとく排除。

言い方を変えると、定番を避けるだけでリアリティにつながり、大きな差別化ができるほど、「踊る」放送前の刑事ドラマは偏っていたのです。

君塚さんはそのように刑事ドラマの定番を避けてリアリティを優先させたうえで、ドラマらしいエンタメ要素をプラス。

それは「所轄のノンキャリア・青島と本庁のキャリア・室井慎次(柳葉敏郎)が立場の差を超えた絆を育んでいく」「事件を通して感情をぶつけ合いながら、同じ理想の警察を求めてバディのようになっていく」という、視聴者に「警察はこうあってほしい」と感じさせる熱い関係性でした。

それまでのような刑事のカッコイイ姿ではなく、警察内部の人間模様にスポットを当てた「踊る」シリーズが圧倒的な支持を集めたことで、刑事ドラマというジャンルそのものが一変。逆に「警察内部の人間模様をベースにしながら、どのように主人公たちの活躍を描くか」という観点から制作されるようになり、現在に至っています。

2010年代、視聴率低下に悩まされた民放各局はリアルタイム視聴の多い中高年層を手堅くつかむために刑事ドラマを量産しました。

連ドラ全体の3分の1から半分を占めるクールもある中、その多くで警察内部の人間模様を描いたことで刑事ドラマというジャンルそのものが飽きられ、「踊る」に次ぐ国民的ヒット作は生まれていません。

事件解決や主人公の活躍に加えて警察内部の人間模様も描いた「『相棒』(テレビ朝日系)があるじゃないか」と思う人がいるかもしれませんが、同作は「中高年層を中心に安定した人気を保つことで連ドラシリーズ化する」という嗜好性がはっきりしたタイプの作品。

「コアなファンを満足させる脚本・演出を練る」ことを優先させるなど、「踊る」のようなあらゆる世代の人々に向けた国民的な刑事ドラマとは異なるコンセプトなのです。

「踊る」の影響を受けすぎている?

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください