セブンより店舗少ない企業が買収提案できる事情 同じ「コンビニ」でもビジネスモデルが対極
東洋経済オンライン / 2024年9月29日 10時0分
ほかにも、空港内やテーマパーク等のエンタメ施設内でのリテールビジネスなどが閉鎖商圏ビジネスといえるが、その市場は限定的であり、日本ではメジャーなビジネスモデルとは言えないだろう。
かつて、日本にも、閉鎖商圏と近い集客モデルで、消費者の移動制約を前提に一世を風靡した業態があった。それが総合スーパー業態である。高度成長を経て、日本にもモータリゼーションが全国に普及していくのが1980~1990年代だった。
この時代、地方でクルマが1家に1台普及していったのだが、当時のドライバーは男性が大半で、ファミリー層にとってクルマで買物というのは、「パパのいる土日に1週間のまとめ買いをする」という買物行動が主流となった。その際、ワンストップショッピングの受け皿となったのが、あらゆる商品を網羅した総合スーパーだ。これはドライバーが土日にしかいない時代の移動制約を背景とした、ある意味、過渡期の閉鎖商圏を前提とした隆盛であった。
その後、2000年代に買物の主役たる女性消費者が免許を持ち、軽自動車というパーソナルカーが普及すると、土日のパパドライバーは必須ではなくなった。機動力と選択の自由を得た女性消費者は、当時のロードサイドに勃興しつつあった各種専門店チェーン(ユニクロ、無印良品、ニトリ、ドラッグストア等々)のコスパを支持したため、総合スーパーの広く浅い平板な非食品売場は急速に衰退した。
移動手段などの制約を前提に来店動機を構成しているビジネスは、その制約が失われれば、競争力を失う。専門店集積であるショッピングモールにワンストップショッピングニーズの主役は移り、総合スーパーがどんどん減っている理由はここにある。
日本型コンビニ、スーパーは不要?
こうした閉鎖商圏ビジネスのことを考えながら、ACT社に話を戻せば、セブン&アイへの買収提案の狙いも見えてくるかもしれない。きっと、彼らは本音では、セブン&アイの北米事業しかいらない、のだろう。効率よい北米の閉鎖商圏ビジネスを拡大することが収益を極大化するのであり、その他の事業(日本型コンビニ、スーパーなど)は企業価値向上の阻害要因となりかねない。
その証拠に、8兆円あったACT社の時価総額は買収提案の公表後、市場が嫌気して12%程度下落した。ただ、セブン&アイの企業データを見てみると、これは今買うしかないだろう、と思えてくることも事実だ。
図はセブン&アイの時価総額と北米事業のデータを示したものだ。セブンの北米事業は2021年3位のスピードウェイを210億ドルで買収して、その事業規模、収益を大きく拡大した。特にACT社にとって重要なガソリン売上などは3倍以上になっている。
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