「あの居酒屋の売上は?」で"人材の質"見抜ける訳 「フェルミ推定は無意味」に対する数学的な反論
東洋経済オンライン / 2024年10月1日 11時0分
フェルミ推定の問題を出題すると、その結果は大きく3種類に分類されます。
①大まかに実態を捉えた回答が素早くできる
②時間をかけた割に実態から大きく外れた回答をする
③どうアプローチしたらいいかわからず思考停止する
まず③は明らかに企業が求める人材ではありませんので、採用面接としては厳しい結果になるでしょう。そこで注目していただきたいのは、①と②の違いです。
じつは①の人は持っているのに②の人は持っていない感覚があります。それは、「最初から完璧な回答を目指さない」という感覚です。なぜその感覚を持っているかというと、細部まで正確に考えようとすることで、大枠を間違えてしまうことが多々あることを知っているからです。
このような感覚を持っている人は、物事を常に「メイン」と「そのほか」で大胆に分類することができます。いまその場面でテーマにすべきものとそうでないものをはっきりさせる能力です。
たとえば、居酒屋の売上を推定するとして、その内訳を因数分解し、むりやり「メイン」と「そのほか」に分けてみます。
売上=飲食+飲食以外
居酒屋において「飲食以外」は実際にはあまり考えられません。洋服を売っている居酒屋が絶対にないとは言い切れませんが、そのような例外を考えることはあまり意味がないでしょう。そこで、「そのほか」は考慮に入れないことにし、「飲食」を2つに分類します。
売上=飲み物+食べ物
ここで再び、「メイン」と「そのほか」という視点を持ち込み、アルコールが「メイン」でノンアルコールが「そのほか」、主菜が「メイン」でおつまみが「そのほか」と考えます。
売上=(アルコール+ノンアルコール)+(主菜+おつまみ)
さらに、再度「そのほか」を除外すると、
売上=アルコール+主菜
という、居酒屋の売上の「メイン」だけが残ります。つまり、居酒屋の売上を推定するためには、アルコールと主菜のことだけ考えればいいのです。この状態にしてから数値を仮定してざっくり概算すれば、大枠の数字は十分に捉えることができます。
しかし、「最初から完璧な回答を目指さない」という感覚がない人は、上記の例において「そのほか」もちゃんと正確に計算しなければと考え、いつまでも思考の対象として残してしまうのです。
ノンアルコールの飲み物やおつまみの売上を一生懸命考えたところで、最終的な成果に大きな影響はないでしょう。最悪の場合、そこでおかしな計算をすることで全体の売上規模を間違えてしまう可能性もあります。ならばそのようなものは大胆に捨ててしまえばいいのです。
「選択と集中」の能力を見抜く
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