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AWS、KDDIで薫陶受けた「ベンチャー社長」の素顔 3月上場ソラコムがたどった異色の成長の軌跡

東洋経済オンライン / 2024年10月1日 8時0分

上場に向けて、ソラコムが生み出した言葉が「スイングバイIPO」だった。

スイングバイは宇宙の用語で、宇宙探査機が惑星の重力を利用して加速すること。親会社のKDDIを惑星、傘下のソラコムを宇宙船にたとえ、スタートアップが大企業の力を借りてさらなる飛躍のために上場する、との意味がある。

いったん大企業の傘下に入った後に離れるような形で上場することは、ともすればネガティブな目で見られる。しかし、「KDDIと仲違いするように出ていくと見られたくない。さらなるマイルストーンを作るためのIPOだ」(玉川氏)として、ポジティブなメッセージ出しにこだわった。

上場後のKDDIの出資比率は4割程度に下がり、持ち分法適用会社になったが、現在も主要取引先としても良好な関係が続く。KDDIグループに入ったことは、結果的に上場準備の面でも役立った。玉川氏は「コンプライアンス、ガバナンス、そして事業計画をどう作り、レビューしていくかという点で、学びもすごくあった。ソラコムという組織が次のステージに向けて訓練されてレベルが上がったので、上場時に実は楽だった」と振り返る。

AWSとKDDI――。日米の2大企業から薫陶を受けながら成長し、満を持して上場を果たした今、玉川氏は引き続き「スタートアップ」であり続けたいという。「世の中の不合理や社会問題に対し、こういうプロダクトを作ったらみんなが喜んでくれるというピュアなパッションを小さなチームが実現していくところ」に、その魅力を感じているからだ。

一方、IT企業の経営者として自身を「ナナロク世代」と位置づける玉川氏は、世代的な問題意識も持っている。

ナナロク世代とは1976年前後に誕生し、大学に入学したころにウィンドウズ95が登場した世代を指す。同世代の上場企業の経営者としては、メルカリの山田進太郎氏(47)やMIXIの笠原健治氏(48)、マネーフォワードの辻庸介氏(48)、さくらインターネットの田中邦裕氏(46)らが名を連ねている。

「日本ではあらゆるITサービスはアメリカのものを使っていて、最近『デジタル貿易赤字』と言われる。ITや通信の時代に日本発のプロダクトがほとんどないのは、この世代の問題だ。われわれの世代がしっかりと頑張って爪痕を残さないといけない。そういう意味で、日本発だけれど、しっかりグローバルのサービスにしたい」(玉川氏)

海外展開でも会社の「匂い」を捨てない

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