アップルと真逆、HTCが打ち出す「VR空間」の新戦略 どこでも使える「手軽さ」でシェア拡大を狙う
東洋経済オンライン / 2024年10月1日 8時0分
IDC Japanのアナリスト井辺将史氏は、HTCの現状をこう述べる。
「HTCは今の国内のトップ企業であるMetaやPicoなどより古くから日本市場で活躍している企業で、この市場においては老舗と言えます。国内ではコマーシャル市場の中で一定のプレゼンスがあり、地道にユースケースの発掘や新規開拓を行っています」
「一方でHTCの出荷数はここ数年は数千〜1万台程度です。近年、Meta、Xreal、PSVR、Picoなどコンシューマー向けのヘッドセットがトップシェアを占めるようになり、相対的にシェアが下がっています。出荷台数自体もコンシューマー向けではMetaやPicoなどと比べた場合、販路やマーケティング、アプリケーションといった面で劣ってしまうので減少傾向にあります」(井辺氏)
カントリーヘッドの小山氏は現状について「市場が広がっている中で、HTCはもともとのユーザーベースがあり、販売数はそれほど変わっていない。新しい製品が出るとコンスタントに売れていく」と述べ、コアなファン層は維持できていると説明する。
他社ヘッドセットにトラッカー提供
HTC NIPPONは、VRヘッドセット市場でのシェア低下という課題に直面しながらも、周辺機器戦略で活路を見いだしている。
VRヘッドセットには“トラッカー”という周辺機器がある。指先や足元などの全身の動きを検出するデバイスだ。HTCはこのトラッカーを、Meta Questのような他社製のデバイスでも利用できるようにしている。小山氏は「VRヘッドセット界のAnkerを目指している」とスマホ周辺機器大手になぞらえて語る。
実際、日本市場ではこの戦略が功を奏している。小山氏によれば、「日本はトラッカー利用率が非常に高く、北米市場と並んで重要な市場となっている」そうだ。特にVR ChatやVTuber文化の隆盛により、フルボディトラッキングへの需要が高まっている。ベースステーションとトラッカーを市場に出すだけで、あっという間に売り切れてしまうそうだ。
いわばコバンザメ戦略だが、HTCは周辺機器からVRエコシステム全体での存在感を高め、直接的なヘッドセット販売に依存しない新たな収益源を確立したと言える。高いクオリティの周辺機器で培ったブランドを背景に、ハイエンドなVRヘッドセットを訴求するという好循環を目指している。
空きテナント活用で広がるVRの裾野
HTC NIPPONのもう1つの独自戦略が、ロケーションベースエンターテインメント(LBE)と呼ばれる「即席VRスポット」の展開だ。LBEとは、特定の場所に設置されたVR機器を使用して、その場所にいる複数人で体験できる没入型のコンテンツを提供するサービスを指す。従来のVRアーケードやテーマパークでのVRアトラクションなどがこれに該当する。
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