アップルと真逆、HTCが打ち出す「VR空間」の新戦略 どこでも使える「手軽さ」でシェア拡大を狙う
東洋経済オンライン / 2024年10月1日 8時0分
HTC Viveではクラウドベースのシステムにより、コンテンツの一斉配信や管理が容易になっている。数十万円の資材を用意して、30分で機材を設置すれば展開できるという。小山氏は「私が目指したいのはショッピングモールとかアウトレットの催事場や、空きテナントが生じた商店街で活用すること」と語る。
また、LBEで子どものVR体験を促進したいと強調する。「ターゲットは小学生です」と小山氏。VRを早期に体験させることで、将来のユーザー層を増やす狙いがある。
その具体例として、北海道紋別市の市立博物館での取り組みがある。2024年8月に実施されたイベントで、25m四方の博物館の入り口のスペースを間借りし、VRゲームの体験スポットを設置した。
この体験では、通常なら数百万円規模の設備が必要なLBEを、極めて低コストで実現している。
「市民博物館の入り口のスペースを片付けて、即席で拵えたものですが、子供たちは大喜びでした」と小山氏は語る。
小山氏は、日本全国にこれを広めたいと考えているという。
HTCが描くVRの未来像
一方で、多くのVRデバイスが13歳以上を対象年齢としている点は課題がある。この点について、小山氏は「VRの年齢制限については、法律で決まっているわけではない。常時装着するのではなく、ゲームセンターでの短時間の体験程度では問題はないのでは」と独自の解釈を示し、“短時間の体験であれば10歳程度から”という新常識の定着を望んでいる。
HTCのトラッカー戦略とLBE展開は、単なる製品販売を超えたVR技術の普及と新たな体験を創出すものだ。トラッカーによるエコシステムの拡大と、LBEによる手軽なVR体験の提供は、相互に補完し合いながら、VR市場全体の成長を促進する可能性を秘めている。
HTCはかつてスマートフォンの市場で鳴らした存在だった。グーグルへの主要開発組織の売却を経て、VRに注力する方向性に舵を切った。スマホ事業も再起動を進めているというが、現時点ではパッとしたものは出ていない。今後の動向に注目したい。
石井 徹:モバイル・ITライター
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