新型「EX90」から見るボルボが描く電動化の未来 「2030年までの完全BEV化」方針は撤退だが
東洋経済オンライン / 2024年10月2日 9時0分
乗り心地も上々。ボルボがセミアクティブと称するデュアルチャンバーのエアスプリングに電子制御ダンパーを組み合わせたサスペンションは、22インチの大径タイヤを履くにもかかわらず、ふんわりと表現するのがふさわしい柔らかさを実現している。前席に居ると、ちょっと柔らかすぎるのではとも思うのだが、2列目はとても快適。良好な前後重量配分もあり、クルマが前後左右に揺れる動きが少ないからだ。
ハンドリング性能も、とてもナチュラルな印象。車重はかさむが重心は低く、しかもリアには左右輪に最適な駆動力を伝達するトルクベクタリング機構を備えるおかげだろう。ボルボらしく、走って楽しいというよりは状況問わず安心して操ることができるという印象である。
なお、このトルクベクタリング機構はクラッチを使ったもので、他の機能として巡航時に後輪の駆動力をカットすることも可能。走行抵抗の低減による電費向上につなげている。
北欧テイストが漂う落ち着いたたたずまいや穏やかな乗り味といった誰もがボルボに期待する要素を見事にアップ・トゥ・デートなものに進化させたEX90が、ブランドのフラッグシップにふさわしいクルマに仕上がっていることは間違いない。
本国価格は円ベースで2000万円弱
懸念があるとすれば、まずは価格。今回乗った最上級のTwin Motor Performanceの場合、本国価格をそのまま円に換算すると2000万円の少し手前辺りということになる。現在のラインナップ最高峰、XC90のPHEVは1264万円だから、明らかに別のクラスに属することになる。
しかも、そのXC90は前述の通りアップデート版が登場する。ボルボはその両輪でハイエンド層にアピールする方針に転換したわけだが、どちらを買うユーザーにとっても、いったいこのブランドはどちらを本命としているのかと、判断しにくくなることは間違いない。
試乗を経て言えるのは、やはりEX90のほうがすべてがゼロベースで開発されているだけに今のボルボをしっかり味わえるということ。もちろん、BEVでも不自由のない使用環境ならば、の話であり、誰にでも等しくお勧めと言えないのがもどかしい。
EX90の日本上陸予定は、現時点では2025年後半だという。よってしばらく待たされることになるが、それまでに電動化を取り巻く状況がどんな風に変化しているかも気がかりと言えるかもしれない。
島下 泰久:モータージャーナリスト
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