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五感を刺激!「三鷹天命反転住宅」のスゴい内部 球体の部屋や砂浜の様な床。気になる間取りも

東洋経済オンライン / 2024年10月5日 8時0分

部屋を見渡しながら驚いたのは、”家の常識“とされるものがないことだ。

この部屋には、玄関以外に扉がない。シャワーブースに仕切りとカーテンが付いているものの、個室にも、トイレにもドアがない。

トイレは、手前のシャワーブースが目隠しとなり、周囲から見えないようになっている。

収納もほぼない。しかし見上げると天井に多数のフックがあり、ハンガーなどを使って吊るす収納ができる。

黄色い世界が広がる球体の部屋

住宅に対する常識が覆されていくなかで、筆者が最もワクワクしたのはこの球体だ。丸くくり抜いたような空間で、足元は傾斜していてツルツルすべり、バランスをとるのが難しい。

寝そべると、目の前が一面黄色になり、声を出すと大きく響いた。色や音に包まれるような気分になる。扉がなくても、どこかほかの部屋との境界を感じることができて、ひとりだけの世界を堪能できる。

床も、普通の家の床とはまるで異なる。うねって高低差があり、立つ位置によって見える景色が変わる。表面は凸凹して歩きにくいが、歩く感触の違いが面白い。室内には登れるポールがあり、久しぶりにのぼり棒を登ってみたが、身体が重く感じて思うように登れなかった。

室内で過ごしながら、身体をおおいに使っていることに気がついた。視覚や聴覚、触覚も、普段よりも研ぎ澄まされている。なぜこのような住宅ができあがったのだろうか。

松田さんは「身体を中心に建物ができている」と表現する。

この三鷹天命反転住宅を手がけた荒川修作さんは、愛知県名古屋市に生まれ、武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)に入学後、前衛芸術作家として芸術活動を始めた。1960年には吉村益信さん、篠原有司男さん、赤瀬川原平さんらと「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」を結成、若きアーティストの一人として注目を集める。

さらなる飛躍を目指した荒川さんは、1961年にアメリカ・ニューヨークへ渡った。翌年には生涯のパートナーとなる詩人のマドリン・ギンズさんと出会い、共同制作を開始。60年代〜80年代にかけて、荒川さんは日本を代表する美術作家として美術館やギャラリーで作品を発表してきた。

そして芸術活動と並行して、荒川さんとギンズさんは「身体」で体験できる建築の世界に関心を寄せ始める。

1995年に岐阜県・養老町に「養老天命反転地」をつくり、長年の構想を実現した。

約1万8000平方メートルの広大な敷地には、人間の平衡感覚や遠近感を混乱させる仕掛けがさまざま施された。筆者も現地を歩き、視覚的な錯覚や不安定な感覚を味わった。ここまで身体の感覚に意識が向いたのはいつぶりだろうか。

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