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五感を刺激!「三鷹天命反転住宅」のスゴい内部 球体の部屋や砂浜の様な床。気になる間取りも

東洋経済オンライン / 2024年10月5日 8時0分

荒川さんはニューヨークから頻繁に来日し、現場に立ち会った。キッチンカウンターの高さ、室内に塗る色など、細かなところまで確認を重ねた。

2005年8月に外壁が塗られ、9月には敷地内に樹木が植えられた。そしてこの年の10月、ついに「三鷹天命反転住宅」は完成したのである。施工費は、2005年当時で3億9000万円だった。

どんな住人が住んでいるか聞いてみると「もの作りをしている人が多い印象ですね」と松田さんは語る。

「ここでの体験をすごく大事にしてくださり、ご自身の創作のきっかけにしてくださる方もいらっしゃいます」

スマートニュースのファウンダーの鈴木健さんや、独立研究者の森田真生さんも元住人のひとり。三鷹天命反転住宅のイベントで当時の思い出を語っている。



「荒川とギンズは、住人の皆さんと頻繁にコミュニケーションを取っていました。彼にとってここはある種、実践の場。どんなふうに暮らしているかをよく聞いていました。FAXでやりとりするのが好きな2人に、住み心地を書いて伝える住人の方もいらっしゃいました」

ドキュメンタリー映画にした住人も

なかには、インタビュー映像で伝えた住人もいる。映画監督の山岡信貴さんは、住人を撮影して映像を編集し、荒川さんとギンズさんに送ったという。その後、ドキュメンタリー映画『死なない子供、荒川修作』として、劇場でも公開された。

筆者も鑑賞し、一般的に考えられる快適さとは異なる住居で、それぞれ自由に創造しながら生活を送る様子が伝わってきた。やはり固定観念が覆される暮らし方で面白い。

ちなみに、5年ほど前から暮らしている妖怪絵本作家の加藤志異さんは、意外な発見として「五感の解像度が上がる」と話してくれた。

「自分の気配と他人の気配がまざって、不思議な雰囲気をつくりだす。子どもと猫は走りまわって、この家を楽しんで使いこなしています。寝ていると反響して、自分の呼吸音が外から聞こえたり、毎日驚きと発見があります」(加藤さん)

賃貸の家賃は16万〜18万円前後。

竣工後、「住宅を見たい」と訪ねてくる人が増えたことから、2007年に見学会をスタートした。民泊も行っており、3泊4日で1人6万7000円からプランが用意されている。これらは荒川さんとギンズさんが大切にしていた「体験」の場になっている。

筆者も見学会に参加し、参加者の年齢層の広さに驚いた。各々、裸足になって歩き、球体の斜面で寝そべり、キッチンや洗面台に立って暮らしをイメージする人もいた。子どもから年配の人まで建物を楽しむ姿が見てとれた。

日常の大切さに気づかされる住宅

「楽しいとか、ここが嫌だなどの反応は、住宅で体験するからこそ感じるものです。この住宅は突拍子もない指標みたいなものです。自分が想像できなかった生活スタイルがあり、家に対する見方や、生活も変わります。日常がどれだけ大切かを気づける場であることが、三鷹天命反転住宅の楽しさのひとつなのかもしれません」(松田さん)

2025年は三鷹天命反転住宅が20周年を迎える記念の年だ。3月に三鷹市美術ギャラリーで荒川さんとギンズさんの展覧会の開催が予定されている。

2人の芸術家の構想をかたちにした「三鷹天命反転住宅」。フシギな空間に足を踏み入れると、身体の感覚や思考を意識する思いもよらない体験が待っているだろう。

【そのほかの写真を見る】「三鷹天命反転住宅」の図面と圧倒される建物内部の写真

鈴木 ゆう子:ライター

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