能登半島地震で被災、繊維業者が復興へスクラム 深刻な液状化、県の支援受け再建に踏み出す
東洋経済オンライン / 2024年10月5日 11時0分
中村社長自身、早期再開は無理だと思っていた。だが、幸いにも機械に損傷がなかったことから、1月中旬には操業再開にこぎ着けた。仕上げ工程などで必要な水は、近くの畑にある井戸からくみ上げ、ポリタンクに入れて一輪車に載せて工場に運んだ。同じく被害が大きかった仕入れ先の繊維商社も原料糸の供給を絶やさず、15~16社ある得意先からの注文にこたえ続けた。
石川県は全国でも有数の繊維産業の集積地だ。元日の地震は、その産地を直撃した。
石川県繊維協会が1月中旬に実施したアンケート調査によると、回答があった283社のうち「被害あり」と答えたのが174社。廃業および検討中を含めて10社にのぼるという。家内工業的な企業だけでなく、100台以上の織機を持つ大手企業も廃業を決めるなど、大きなダメージを受けた。
中でも、ナカムラ物産が立地するかほく市は、細幅ゴム入り織物と呼ばれる製品の一大産地だ。県庁所在地の金沢市から車で25~30分のかほく市には、全国の生産量の6割以上が集中している。
石川県ゴム入織物工業協同組合(かほく市)によれば、組合員55社のうち50社がかほく市内に立地する。内灘町の企業を含めて約15社が地震による被害があったという。「地震を機に事業をやめる予定の企業も2~3社ある」と同組合の宮崎泰弘専務理事は説明する。
とりわけ地震による被害が大きかったのが、ナカムラ物産がある、かほく市大崎地区や内灘町の業者だった。海に面した砂丘から河北潟の干拓地に向かう地下水が砂と混じり合って液状化し、横方向に流れる「側方流動」が起きたためだ。
トレーラーハウスの手配に奔走
液状化は、被害を大きくするとともに、早期の再建を著しく困難にしている。
同じくかほく市大崎地区で操業する「亀井重繊維」(亀井重春社長)では、工場とつながっていた自宅部分が側方流動によって県道に向かって倒れかかった。自宅と隣接する工場内の事務所部分も損壊し、自宅とともに取り壊しを余儀なくされた。幸い、機械が置かれていた工場建屋の主要部分は著しい被害を免れたが、二十数センチメートルの傾斜が発生した。
その後、事務所は、避難先として新たに借りた自宅に移設。加工場は取引先の一角を間借りし、行き来を繰り返している。「現在、工場では事務所スペースがないため、注文の電話が来た際には、外に出て通話をしている状態。雨や雪が降ると仕事にならない」(亀井社長)。
そこで亀井社長はトレーラーハウスを手配してこの冬を乗り越える算段だが、「入手には時間がかかりそうだ」という。現在、残った建屋部分では8台の機械がフル稼働しているが、能力に余裕がないため「試作品の作成ができず、柔軟に対応できない」という。
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