ハマス・イスラエル戦争から1年・中東情勢の行方 人質解放、ヒズボラ攻撃、イラン報復…戦局は多方面へ
東洋経済オンライン / 2024年10月5日 9時0分
イスラエルの攻撃で破壊されたレバノン・ベイルートのダヒヤ地区。同地区はヒズボラの拠点とされる。ヒズボラの指導者だったナスララ氏のポスターが見える(写真・2024年10月2日撮影、Houssam Shbaro/Anadolu via Getty Images)
ハマスの奇襲テロによって始まったハマス・イスラエル戦争から、間もなく1年が経つ。ハマスに拉致されたままの人質は今も101人いる。
2024年9月12日、イスラエル国防軍(IDF)が、ガザ地区内のハマス最後の拠点とされるラフィアフを制圧したと宣言したが、人質は今もガザのどこかに監禁されたままだ(人質のうち約3分の1はすでに死亡していると推定されている)。
目まぐるしく変化する戦局
ここに来て、戦局は目まぐるしく変化している。2024年10月1日、イランはイスラエルに対して180発以上の弾道ミサイルを撃ち込んだ(イランは極超音速ミサイル「ファタ」を使用したと公表しているが、真偽は不明)。イスラエルのミサイル防衛システムに加え、地中海に展開するアメリカ軍のミサイル駆逐艦2隻が協力し、大半は迎撃された。
イスラエルの発表によると、今回の攻撃による死者は1人。犠牲になったのは、エリコに滞在中のガザ出身の男性だった。ミサイルが直撃したのか、迎撃された破片に当たったのかは明らかになっていないが、イランの攻撃でガザ市民が殺されるとは皮肉としか言いようがない。
攻撃の最中、イスラエルでは1800回以上のアラートが鳴った。アプリの画面を見るとわかるとおり(次ページ画像)、イスラエルの中央部から北部にかけてほぼすべてが攻撃対象になっている。イランがイスラエルを直接攻撃したのは、2024年4月14日以来、今回で2回目となる。
攻撃の直後、イラン・イスラム革命防衛隊は「ハニヤ、ナスララ暗殺への報復として、我々はシオニスト政体を攻撃した。イスラエルが反撃するなら、より壊滅的な報復を受けることになるだろう」と声明を発表した。
4月にイランがイスラエルを初めて攻撃した際は、シリアのイラン大使館敷地内で、イラン・イスラム革命防衛隊の幹部が殺害されたことへの報復だった(「ガザめぐりイスラエルとイランが戦い合う理由」参照)。
イランはイスラエルとの全面戦争を望んでいないというが、直線最短距離で1000キロメートル以上離れたイスラエルに対して2度目の直接攻撃に踏み切ったのである。
イスラエルを取り巻くここ2カ月ほどの主な動きを時系列に整理したい。
2024年7月30日、IDFはレバノンの首都ベイルートを空爆し、ヒズボラの最高幹部フアド・シュクルを暗殺したと発表した。シュクルはヒズボラ創設メンバーの1人で、ヒズボラの最高指導者ナスララの側近だった。戦争が勃発してから、ハマスを側面支援するという名目で、レバノン南部からイスラエルへの攻撃を指示してきた人物である。
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