イスラエルの「最も危険な男」を誰が止めるのか 見捨てられないアメリカを無視するネタニヤフ首相
東洋経済オンライン / 2024年10月7日 20時0分
ネタニヤフ首相の頭には、かつてのイスラエルの首相が苦しみながらも挑戦した話し合いによる合意形成で平和的秩序を構築するという考えはまったくない。軍事的手段でしか平和は実現しないという極めて単純な発想で戦線を拡大しているのである。そして、それが同時に彼の権力維持の手段でもある。
昨年10月のハマスの奇襲はネタニヤフ首相にとっては屈辱的なことであったが、責任を取って辞任するのではなく、この危機を逆に生かして戦時内閣を作り、ガザ侵攻に踏み切った。国民の間に恐怖心をあおり、戦闘を正当化していった。
ガザの戦闘が落ち着き始めると新たにヒズボラという標的を作り出し求心力を維持した。一方で連立政権のパートナーである極右勢力をひきつけておくためには、彼らが主張する「停戦拒否」を受け入れるとともに、ヨルダン川西岸の入植地拡大を続けパレスチナ人に対する弾圧を緩めなかった。
もちろんネタニヤフ流の戦線拡大や権力維持に対する強い批判はある。
アメリカ政治史上、ユダヤ人として最高位の上院院内総務に就いたチャック・シューマー議員はネタニヤフ首相について、「自らの政治的生き残りをイスラエルの最善の利益よりも優先させて、道を見失った。ネタニヤフ首相が、暴力の連鎖を断ち切り、国際舞台でイスラエルの信用を維持し、二国家解決に向けて取り組むと期待する人は誰もいない」と厳しく非難している。
またイスラエルとの関係正常化の動きが取りざたされているサウジアラビアのサウード外相も「イスラエルの真の安全はパレスチナ人の正当な権利を認めることから生まれる。占領と恨みの土台の上に平和を築くことはできない」と語る。
残念ながら、こうしたまっとうな主張がネタニヤフ首相の耳に届くことはなさそうだ。
もはやアメリカの要求も無視
1948年のイスラエル独立後、中東和平問題で大きな役割を果たしてきたのはアメリカだった。
1978年にはカーター大統領が動き、エジプトのサダト大統領とイスラエルのベギン首相が、国交を結ぶキャンプデービッド合意を締結した。
1993年にはクリントン大統領が間に入り、イスラエルのラビン首相とPLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長が、イスラエル国家とパレスチナ自治政府を相互に認めるオスロ合意を締結した。国際社会においてアメリカが圧倒的な力を持っていた時代だったからこそ実現した交渉だった。
アメリカの衰退とともにイスラエルに対する力も落ちていった。
この記事に関連するニュース
-
ユダヤ対ペルシャの新たな中東戦争 長期化は避けられず 中川浩一・日本国際問題研究所客員研究員
産経ニュース / 2024年10月6日 14時18分
-
バイデン米政権、中東の紛争拡大を制御できず 大統領選を控え後手に、停戦協議も頓挫
産経ニュース / 2024年10月2日 21時46分
-
戦火の拡大は「抵抗の枢軸」を狙うハマスの思うつぼ...中東全域が全面戦争の勃発前夜のような不穏な空気に
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月1日 16時26分
-
イスラエル首相「平和希求も存亡かけ戦う」、国連総会で演説
ロイター / 2024年9月28日 2時0分
-
プーチンと並び立つ「悪」ネタニヤフは、「除け者国家」イスラエルを国連演説で救えるか
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月26日 18時15分
ランキング
-
1上皇后さま、右大腿骨を骨折=仙洞御所で転倒、東大病院で手術へ―宮内庁
時事通信 / 2024年10月7日 21時20分
-
2「芸能界引退なんて全然…」“不同意性交罪等の疑いで書類送検”ジャンポケ斉藤慎二(41)を独占直撃《性加害の事実について語った》
文春オンライン / 2024年10月7日 9時50分
-
3“裏金議員”非公認は10人以上か? 安倍派議員から反発の声相次ぐ
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年10月7日 17時22分
-
4連続強盗の容疑者、リフォーム業で過去に家宅捜索 資産情報を悪用か
毎日新聞 / 2024年10月7日 20時42分
-
5党首討論、1時間20分に延長=衆院解散前、最後の論戦へ
時事通信 / 2024年10月7日 16時19分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください