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イスラエルの「最も危険な男」を誰が止めるのか 見捨てられないアメリカを無視するネタニヤフ首相

東洋経済オンライン / 2024年10月7日 20時0分

残り任期がわずかとなったバイデン大統領は、中東和平実現をレガシー(政治的遺産)とすべく積極的に動いている。ガザでの停戦、ヒズボラとの停戦を繰り返しイスラエルに提起しブリンケン国務長官らが活発に動いた。しかし、ネタニヤフ首相はアメリカの要求を無視し、裏切り続けている。

ネタニヤフ首相は首相在職期間が通算で18年に及び、これまで4人のアメリカ大統領と付き合ってきた。アメリカ政府の要求をいくら無視してもアメリカはイスラエル支持を変えることができないと見切っている。

アメリカは歴代政権が民主、共和両党を問わずイスラエルを支持し、ハマスやヒズボラをテロ組織に指定している。またイランに対しても経済制裁を続けている。国民の多くもイスラエル支持を当然視している。

仮にバイデン大統領がネタニヤフ首相を批判し武器の提供などをストップすれば、共和党はもちろん民主党の中からも、そして多くの国民から「イスラエルを見捨ててテロ組織を支援するのか」などと批判されることは避けられない。

まして今は大統領選の終盤という微妙なタイミングである。イスラエル批判が民主党候補のカマラ・ハリス副大統領に不利に働くことは明らかである。

そればかりかアメリカは、イスラエルの戦線拡大を前に地中海やオマーン湾など中東地域への米軍の増派を進めており、和平推進とは真逆の行動を強いられているのである。

欧州も国連も、身動きが取れない

では、次々と新たな脅威を作り出し戦闘を継続するネタニヤフ首相を誰が止めることができるのか。

世界各地でネタニヤフ首相を批判するデモが繰り広げられている。しかし、ユダヤ人のホロコーストという歴史を抱えるドイツをはじめ欧州主要国は、イスラエル批判を鮮明にすることができないまま、身動きが取れないでいる。

ウクライナ戦争をめぐって欧米主要国と中ロが決定的に対立する国連は完全な機能不全に陥っている。

その結果、イランとの戦闘が本格化し戦乱が湾岸諸国まで巻き込むようなことになれば、中東からの原油供給がストップするなど国際社会も世界経済も大混乱に陥ることは必至である。

世界の主要プレーヤーが何もできない中、ネタニヤフ首相は自分の好きなように中東の危機を演出し権力を維持し続けるのであろうか。

今やネタニヤフ首相は世界で最も危険な男の一人になりつつある。

薬師寺 克行:東洋大学教授

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