石破政権では意外に低金利政策が続くとみるワケ 円安は抑制、利上げも0.75%程度で打ち止めに?
東洋経済オンライン / 2024年10月8日 9時30分
それに対して石破氏は「財政規律重視、金融緩和は節度を持って」という具合に高市氏の対極にあった。そのため、石破氏の勝利が伝わると金融市場では大幅な円高が進行し、週明けの株式市場では日経平均株価が約2000円の下落となった。市場参加者、とくに日本の事情に必ずしも精通していない海外投資家は「石破政権が日銀に利上げを迫る」との予想に基づき、円買いを実施したとみられる。
ここで改めて重要なのは、円高それ自体が日銀の利上げを抑制することだ。ゆえに筆者は、緩和に積極的でない石破政権のほうが、(金融市場で自然に円高が進むので)結果的に利上げは緩やかになるとみている。円安が抑制され、輸入物価に下押し圧力が加わることで、日銀は物価の基調を見極める際の時間的余裕が増す。
仮に高市氏が首相に選出されていた場合、日銀に緩和を続けるよう圧力をかけるのは必至だったことから、その際は円安が急加速し、輸入物価の上振れリスクが高まることで、日銀はむしろ利上げに追い込まれる可能性が高まっていたのではないか。
筆者は日銀が2024年12月に0.25%の利上げを実施した後、2025年末までに追加で2回の利上げが実施され、政策金利は1%程度になると予想している。だが、石破政権の下で円安が抑制された状態が続けば、0.75%ないしは0.50%で利上げは打ち止めになる可能性が高まると判断している。
こうした低金利環境は、株式の(債券に対する)相対的な魅力を高め、株高に貢献するだろう。「金融緩和に積極的でない石破政権が日銀に圧力をかけることで円高が進行する」という経路が存在しないことを、改めて強調したい。
日銀短観で堅調な企業業績も確認
さて、日本株を考える上でもう一つ重要なのは企業業績の行方である。その点、10月1日に発表された日銀短観は安心感のある結果であった。業況判断DIは、大企業製造業がプラス13と前回調査対比横ばいも、市場予想(プラス12)を上回った。日本の基幹産業である自動車については、認証不正が残存する中、台風の影響もあって生産の停滞が継続したものの、全体への波及は限定的であり、そうした下で半導体市況の好転などから電気機械などの業況が上向いた。
また、大企業非製造業はプラス34と前回調査対比1パーセントポイント上昇し、1991年以来の高水準を維持。活況を呈するインバウンド、企業の旺盛なDX投資(含む生成AI関連投資)が支えになったとみられ、広範な業種が高水準を維持した。こうした動きは日銀算出の実質消費活動指数が回復傾向にあることや、8月景気ウォッチャー調査が強めの改善を示したこととも整合的である。
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