石破政権では意外に低金利政策が続くとみるワケ 円安は抑制、利上げも0.75%程度で打ち止めに?
東洋経済オンライン / 2024年10月8日 9時30分
さらにTOPIX(東証株価指数)構成銘柄と近い属性である大企業全産業の業況判断DIはプラス23と、前回調査対比1パーセントポイント上昇した。またTOPIXの予想EPS(1株利益)と密接に連動する売上高経常利益率の年度計画はプラス8.97%と高水準を維持している。円安による業績カサ上げが剥落したこともあってか、限界的改善こそ一服しているものの、好調な企業収益を示唆する領域にある。
この間、企業の物価見通し(全規模・全産業、1年後)は、販売価格見通し(≒自社製品・サービスの価格設定スタンス)がプラス2.8%であるのに対して、物価見通し(≒日本の物価上昇率)はプラス2.4%であり、販売価格見通しが物価見通しを上回る傾向が続いている。
換言すれば、企業は物価上昇率以上に値上げを進めるということだ。これは、企業の競争力の源泉が価格(安値)から、高付加価値化など別の要素に移りつつあることを示唆しているように思える。こうした積極的な値上げの動きはコロナ期前には観察されなかった傾向であり、来期も積極的な価格転嫁により収益を確保する動きが続く可能性を示唆している。
名目GDP拡大こそ株価上昇の裏付け指標だ
これは株価にとって重要な金額ベースの経済規模、すなわち名目GDPの拡大が一段と進むことを意味するので、素直に株高の原動力と捉えて差し支えないだろう。インフレが進行したこの2年半程度、実質GDPが伸び悩むのをよそに、名目GDPは順調に拡大しており、2024年4~6月期には初めて600兆円の大台を突破した。
それと時を同じくして日経平均株価が4万円の大台を捉えたことは単なる偶然ではないだろう。ここ数年、「マイナス成長なのに株高はおかしい。金融緩和によるバブルだ」と切り捨てる声もあるが、そのマイナス成長の意味するところが実質GDPであれば、そもそも論点にやや問題があると言わざるをえない。
もちろん、実質GDPが伸び悩む中での株価上昇は健全でない部分もある。だが、名目GDPでみれば日本経済は順調に拡大し、企業の1株利益も増加しているため、この間の株高に大きな違和感はない。これこそが「株式はインフレに強い」と言われるゆえんであろう。
日本株は低金利環境が続く下で、インフレを追い風に息の長い上昇が期待される。アメリカ経済が現在の粘り強さを維持すれば、日経平均株価は1年以内に4万2000円を回復するだろう。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
藤代 宏一:第一生命経済研究所 主席エコノミスト
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