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DV被害の妻が息子の不登校で目覚めた新たな道 母親が精神的自立を果たして子どもが変わった

東洋経済オンライン / 2024年10月9日 10時50分

「何かを言えば主人からは怒りで返ってくる。それが恐怖でした。私自身が早いうちから主人に愛情がなくなって、それが負い目になっていつも自分の感情を押し殺していました」

これまでのことを冷静に振り返る美香子さん。夫婦仲が悪いと子どもの不安感や情緒不安定を引き起こし、学校に行く意欲を低下させます。親の関係性は子どもの心に大きな影響を与えるのです。

3人の息子さんたちはどうされているのでしょう?

「成人している長男と次男には主人の借金のことを話しました。ふたりとも『ひとりで抱え込まないで』と言ってくれました。長男は『50歳を過ぎた母さんが一生懸命勉強するのを見てぼくもチャレンジしてみたくなった』と国家公務員の試験を受けて合格し、今は公務員として働いています。次男も仕事に復帰したのち、今は大学生になって勉強しています」

現在、三男さんは18歳。「学校には行っていませんが、実家の畑や家事を手伝ってくれています。主人には食費をもらう約束で通帳を返しましたが、約束より少ない額しかもらえていません。三男はそれを知って『母さん、ぼく、いろいろ工夫してごはんつくるから、この状況を楽しもうよ』と。それからは買い出しと炊事を手伝ってくれています」

「母さんが応援してくれたらがんばれる」

「三男が『世界に80億人いる中で、ぼくの母さんはたったひとりだ。母さんひとりが応援してくれたらぼくはこの世の中でがんばっていける』と言ってくれたことも忘れられません」

今、美香子さんは息子さんの不登校のことをどう感じているのでしょう。

「息子は自分の気持ちと周囲との折り合いがうまくつけられなかったんだろうなと思います。私は母親として、何度も失敗したけれど、結局、信じて見守ることしかできないですね」

【ランの視点】

マインドコントロールを解き、変わった力関係

美香子さんからの相談を受け始めて数年。お子さんの不登校から始まった相談は、思いがけず美香子さん自身の生き方に伴走する時間に変わっていきました。

ご主人の借金や暴言も、ただひたすら耐える美香子さんを見て、なぜ、美香子さんはここまで何も言わないのか、言えないのか、そしてこれからどうしていきたいのかを、ひとつずつていねいに聴いていく時間になりました。それはご主人のマインドコントロールから美香子さんが解き放たれる過程でもありました。

お子さんたちもご主人の味方、実家のご両親にも頼れず、誰にも頼れないひとりぼっちの美香子さんでしたが、その状況に負けず、自分の正直な気持ちに向き合って、少しずつ強さを取り戻していかれました。

いつも真剣にまっすぐに行動していく姿が夫婦のパワーバランスを変えたのでしょう。ご主人にはっきりと離婚の意志を伝え、国家資格を取り、今度は世の中の親子をサポートする側に回ろうとしています。

不登校の相談を受けていると、今回のように夫婦の問題が表面化することがあります。親の変わる姿を見て、子どもたちにも変化が起きる。今回の事例は、いろんな苦悩を抱える親たちに希望と勇気を与えてくれるのではないでしょうか。

ラン:不登校コンサルタント、ブロガー

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