いいもの安く「VW日本法人」本国との戦いの果実 新型T-CROSS試乗会で聞いたジャパンの仕事
東洋経済オンライン / 2024年10月10日 11時40分
一部の自動車好きには、「フォルクスワーゲンの製品はマジメでいまひとつ華やかさに欠ける」という印象を持たれている。たとえば、BMWやミニやプジョーは、デザインもインフォテイメントも、いかにも新しい。演出がうまいのだ。
ゴルフは、1974年の第1世代から50年間にわたり、太いリアクォーターピラーを持ったハッチバックスタイルを守り続けている。セダンが市場で飽きられてきたように、伝統的なスタイルからイメージの刷新を求める声があるのも事実だ。
フォルクスワーゲンはちょっと古いのか……、そんなことを考えていたが、マイナーチェンジを受けたT-CROSSに乗ってみて、認識を新たにした。フォルクスワーゲンの“いいところ”がぎゅっと詰まっているようなでき映えだったからだ。
ボディも内装も「質感が高い」
では“いいところ”とは、なんだろうか。まずはボディ。先述のとおり全長は4mをほんの少し超えただけの4140mmで、全幅は1760mm、ホイールベースは2550mmと、昨今のクルマの中ではコンパクトだ。国産車でいえば、トヨタ「ヤリスクロス」より数cm短いだけ。
それでいて、室内は意外なほど空間的な余裕があるから驚きだ。身長175cmの人間が4人乗っていられる。パッケージのうまさは、フォルクスワーゲンのお家芸だ。
次の“いいところ”は、作り。ボディは剛性感があり、ドアの開け閉めもバスンッと頼りがいのある音がする。室内の質感も高くなった。
ドイツのプロダクトは、一般的に黒で質感を表現する傾向がある。クルマも同様で、合成樹脂やファブリックなど異なる素材を使っていても、黒基調で統一する努力をしてきた。
素材感が端的に表れるという黒色で統一感を生み出すことにより、“作りのよさ”をアピールする戦略をとってきたのだ。
でも、T-CROSSはデビュー当初から、そんな黒戦略を捨て、カラフルな素材の組み合わせを採用していて新鮮だった。最近のフォルクスワーゲンが得意とする、きれいな色づかいの内装が選べる。
ただし、ブラックの内装も用意されているので、同色での質感創出はコストがかかるから避ける、ということではないようだ。
ドライブフィールは痛快ともいえる
T-CROSSの“いいところ”には、もちろん走りも含まれる。グレードは3つ設定されているが、エンジンは999cc3気筒ガソリンターボで一本化。
ミラーサイクル化されていて、燃費は17.0km/L(WLTCモード)と良好であるいっぽう、85kW(116ps)の最高出力と200Nmの最大トルクという数値から想像する以上に力があって、痛快ともいえるドライブフィールを味わわせてくれる。
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