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いいもの安く「VW日本法人」本国との戦いの果実 新型T-CROSS試乗会で聞いたジャパンの仕事

東洋経済オンライン / 2024年10月10日 11時40分

発進から加速していくまでエンジンの力が途切れないよう、ターボチャージャーの設定も巧妙だし、7段デュアルクラッチ変速機(DSG)によるギアチェンジのタイミングもうまい。

燃費を追求するあまりシフトアップを急ぎ、アクセルペダルを踏み込んだときに“トルク感がスカスカ”という味気ないクルマもあるが、T-CROSSはドライバーとの一体感をしっかり感じさせる。

ステアリングフィールはしっかりとしていて、切り込んだときの車体の反応もいいし、サスペンションは、カーブを曲がるときに車体の傾きをしっかり抑える一方で、高速走行ではフラットで快適な乗り心地を提供してくれる。

さらにもうひとつ、新しくなったT-CROSSには“いいところ”がある。それは価格だ。

もっともベーシックな「TSI Active」で329万9000円。フォルクスワーゲン好きが興味を持つであろう日本の競合車と比較しても、こちらのほうが安いぐらいだ。

「フォルクスワーゲンは、ずっと“技術の民主化”というポリシーを追求してきました」。前出の山谷氏は言う。

「競合ブランドと同等かそれ以上の性能をもつ車両を、はるかに下回る価格で提供する。いいものは、できるだけ多くの人に接してもらいたいから価格を抑える。それが“民主化”なのです。高性能なゴルフGTIやゴルフRを見てもわかるでしょう」

いい製品は日本法人の「戦い」があってこそ

今回のT-CROSSは、まさにそのポリシーに忠実に開発されたと評価できるモデルだった。フォルクスワーゲンファンに、好きになったきっかけを尋ねると、多くのファンは“性能、品質、デザイン、価格のバランスがとれている”ことを挙げる。

「正直に言って、円がいまより強かった時代は、日本でもなんの問題もなく“民主化”政策を推し進めることができました。でも、欧州と日本とで経済成長の差が開きはじめ、円が弱くなると、本来のフォルクスワーゲン車のよさを追求していくのが難しくなってきます。そんな中で、私たちは、手の届きやすいプロダクトを日本のユーザーに届けることが使命だと思っています」

実際、ゴルフやBEVの「ID.4」は欧州より日本のほうが、価格が低く設定されているそうだ。その努力を山谷氏は「戦い」と、やや冗談めかして表現する。

メーカー相手にその「戦い」をしてくれたから、今回の新型T-CROSSがより輝いているのだと思う。輸入車の日本法人は、右から左に、プロダクトを売るだけが仕事ではないのだと、改めて感じさせるのだ。

【写真】ディテールまで見てほしい新型「T-CROSS」(59枚)

小川 フミオ:モータージャーナリスト

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