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パーパス経営から「エシックス経営」に進化せよ 「多」律背反を解くための商売の基本倫理とは

東洋経済オンライン / 2024年10月10日 7時40分

PTRBは、倫理経営のプリンシプルとして秀逸である。タケダイズムは、倫理哲学としては素晴らしいが、それだけでは、収益との関係性が希薄だ。それに対して、患者への想いをスタートに、それが信頼、さらにはブランドという無形資産として蓄積されることで、事業、すなわち財務価値に転換されていく。

無形資産は非財務ではなく、未来の財務価値(未財務)を生む資産であることを、行動原理のレベルで、きわめてシンプルに示しているのである。

タケダのように、世界規模で倫理経営の最前線に立つ企業にとって、無形資産は将来価値の源泉となる「未」財務資産なのである。この本質的な視座に立たない限り、エシックス経営も、またぞろ、一過性のブームに終わってしまうことだろう。

逆に、「パーパス→プリンシプル→プラクティス」を三位一体として、有機的につなげていくことができれば、エシックス経営を力強く実践していくことができるはずだ。

タケダの進化は止まらない。2021年12月には、「世界に尽くせ、タケダ。革新的に。誠実に。」という新たなパーパスを掲げた。

「誠実」という伝統を踏まえて絶えず革新し、革新を新たな伝統としていく。この躍動感に満ちた信念こそが、世界規模で未来を拓いていく「シン日本流経営」の流儀となるはずだ。

「もったいない」を世界へ

次に、とびきり若い企業を取り上げよう。クラダシだ。10年前の2014年7月に創業、それから9年足らずの2023年6月には、東証グロース市場に上場。今なお、快進撃を続けている。

クラダシという社名は、「お蔵入り」している資産に市場価値をつけることに由来している。同社のミッションは「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」、ビジョンは「日本で最もフードロスを削減する会社」である。

創業以来、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう可能性のある商品を自らのリスクで買い取り、自社通販サイトで、需要に合わせたダイナミックプライシングで販売している。

特に素晴らしいのが、平均年齢32歳という同社の若い社員全員が自分ごと化しているプリンシプル(同社では「バリュー」と呼ぶ)である。クラダシの社員は「前例を創ろう」「アクセル全開!」「明るく楽しく元気よく」という3つの行動原理を、日々実践している。

なかでも「前例を創ろう」には、目を見張らされる。フツーの企業では、「前例がない」ことが諦める言い訳になるのに対して、あえて前例となる新しいことにチャレンジすることを奨励しているのである。もちろん、ゆるい取り組みでは、前例となるような素晴らしい成果は上げられない。そこでは、「圧倒的な当事者意識」が求められるのだ。

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