パーパス経営から「エシックス経営」に進化せよ 「多」律背反を解くための商売の基本倫理とは
東洋経済オンライン / 2024年10月10日 7時40分
「もったいないを価値へ」は、クラダシの志が込められた言葉である。それは3R(リデュース、リユース、リサイクル)、さらには、Regenerative(再生)という世界の潮流に先行するものでもある。Motttainaiの意味を「Too Good to Waste」と説明することで、日本発の世界用語として広がっていく可能性があるのではないだろうか。
ちょうど、長寿村として世界に注目される沖縄・大宜味村の秘密が、「Ikigai」という言葉に託されて、世界に広がっているように。
パーパス経営からエシックス経営へ
さて、ではいかにしてエシックス経営を実践していくか。パーパスは未来の「ありたい姿」を語っていればいいが、エシックスは「多」律背反が渦巻く現実の課題を解くカギとならなければならない。そのためには、3つの軸に沿って、視座をずらすことが求められる。
第1は空間軸である。ここでは、閉鎖系から開放系へのパラダイムシフトが求められる。人間中心主義から、生物・無生物、地球・宇宙、そして自然や生態系全体に、視野を広げていく必要がある。
その際にヒントとなるのが、日本が古来、大切にしてきた「共生」という生き方である。そして、未来に向けて、私たちは「空間編集力」を鍛えていかなければならない。
第2は時間軸である。過去・現在・未来という時間を、線形に捉えるのではなく、非線形として捉え直す。過去から現在の延長に未来はない。デジタル技術やバイオ技術は、非連続な未来を拓いていく。
一方で、未来や過去が、時間を飛び越えて現在に姿を現す。この「共時性(シンクロニシティ)」は、古来「縁起」という現象として、日本人が大切にしてきたものだ。私たちは、この「時を駆ける」力を起点に、未来の倫理を紡ぎ出す「時間編集力」に磨きをかける必要がある。
第3は価値軸である。価値が多元化する中で、異質なものを同質化する「ダイバーシティ&インクルージョン」から、異質性を包含しつつ、そこから次世代の異質な価値を紡ぎ出す「インクルージョン&ダイバーシティ」へのパラダイムシフトが求められる。
その際には、日本古来の「ムスビ」や「結」の思想がパワーを発揮する。同時に、異質から異次元の異質を生み出す「異質(ヘテロ)編集力」を身に付ける必要がある。
キーワードは「シン三位一体」
これら3つの軸は、独立したものではない。空間は3次元、時間は4次元、そして価値は5次元の広がりをもって、かつ、重なり合っている。これら次元を超えた「三位一体」をいかに編集できるかが、エシックス経営の究極の課題である。
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