ダヴ「ルッキズムに異議」が皆の怒りを招いた根因 「啓発キャンペーン」がなぜ批判されてしまったのか
東洋経済オンライン / 2024年10月10日 16時20分
この広告は、称賛の声が大半で、批判意見はほとんど見られなかった。特定の行動や意見を否定や批判するものではなく、先述した1、2のどちらの要素もなく、人々から受け入れられやすいメッセージだったからだ。
筆者としては、キャッチコピーに「剃るかどうか」ではなく、「ムダかどうか」という言葉を使った点も大きいように思う。これによって、より一般的、普遍的なメッセージになっているからだ。
もうひとつは、2023年にリクルートの結婚情報サービス「ゼクシィ」が創刊30周年を記念して、渋谷駅に掲出した大型看板である。
この看板は、同性カップルや事実婚カップルなどの、マイノリティの複数カップルの写真に、「あなたが幸せなら、それでいい。」というキャッチコピーを添えたものだ。
この広告は、見方によっては挑戦的かもしれないが、渋谷区は2015年に「同性パートナーシップ条例」を施行しているし、渋谷はリベラルな若者層も多いため、その場に馴染みやすい広告だったと言えるだろう。
リアルで広告に接してSNSに投稿していた人たちの大半は、この広告をポジティブにとらえていたように見える。
やはり、この広告も「あなたが幸せなら、それでいい。」というキャッチコピーによって、性的マイノリティの啓発だけでなく、一般的、普遍的なメッセージへと昇華されている。
ただし、この広告もメディアで報道された際には、保守派の人たちから批判的な意見も出た。性的多様性自体を否定する意見は少数派だったが、「マイノリティの人を広告にして、広くアピールする必要はあるのか?」という意見は少なからず見られた。
ナイキやダヴの事例と同じで、「意見自体は否定しないが、声高に言うことではない」といったところだろう。
全体としてはポジティブな意見が優勢だったので、成功だったと言っていいが、話題が広がれば広がるほど、意図しない反応も出て来てしまうのも事実だ。
どうすれば「炎上」を避けられるのか
他にも日本で称賛された事例として、P&Gのヘアケアブランドのパンテーンが行った「#HairWeGo」キャンペーンがある。
このキャンペーンは、髪をテーマに、1人ひとりの個性を尊重するきっかけづくりを行おうとする取り組みだ。ブラック校則の見直しを促したり、就活を自由な髪で行うことを呼びかけたりと、社会活動的な側面も持った取り組みとして、高い評価を得ている。
ダヴもパンテーンも、ともにしっかりと調査を行ったうえで、それに基づいて展開されている。ダヴのほうも、メッセージの方向性自体がズレているわけではない。違いは、表現面での細かな配慮に出ているように思う。
ダヴの広告は、「リアルビューティー・キャンペーン」の流れから、グローバルな発想で展開されたものだと思うが、欧米であれば、おそらく炎上はしなかったのではないだろうか。
ある考え方を否定したり、批判したり、疑問を呈したりする表現は刺激的ではあるが、日本では批判を受けやすい。
パンテーンの「#HairWeGo」は、規制の考え方に疑問を呈するものだが、キャッチコピーも、「この髪どうしてダメですか」「さあ、この髪でいこう。」「この髪が私です。」といったもので、否定形にはなっていない。
商品の利用者やターゲット層以外の人たちにも共感されるメッセージになっていたのか否か? というのがポイントであったように思う。
【画像】むしろ知らない言葉のほうが多い? 「ルッキズムを煽ってる」と批判殺到のダヴ広告
西山 守: マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
靴下屋「"キレ気味"投稿で炎上」から得られた学び 過去には同アカウントの投稿が称賛されていたが…
東洋経済オンライン / 2024年12月18日 14時0分
-
「ダンダダン」キャラクターの黒人化が国際論争に―香港メディア
Record China / 2024年12月12日 14時0分
-
伊藤英明 丸刈り&細眉から一転!今度は衝撃的ロン毛に変身に「最高です!」「ツヤツヤ」の声
スポニチアネックス / 2024年12月10日 18時39分
-
Luup社長「違反者を撲滅できる」発言が炎上…急拡大する電動キックボードに渦巻く「いけ好かなさ」の正体
プレジデントオンライン / 2024年12月4日 17時15分
-
トランプを勝たせたアメリカは馬鹿でも人種差別主義でもない
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月27日 18時41分
ランキング
-
1《追悼・渡辺恒雄さん》週刊ポスト記者を呼び出し「呼び捨てにするな、“ナベツネさん”と呼べ」事件
NEWSポストセブン / 2024年12月21日 16時15分
-
2オープンAIの新たな生成AI「人間並み」近づく…安全性を確認するため当面は研究者に限定提供
読売新聞 / 2024年12月21日 18時19分
-
3ゴーン被告「日産の内部はパニック状態」「ホンダはこの取引に押し込まれた」
読売新聞 / 2024年12月21日 18時30分
-
4車両生産で相互乗り入れ検討 ホンダ、日産にHV供給も
共同通信 / 2024年12月21日 16時3分
-
5「本当に就職に強い大学ランキング」トップ150校 卒業生が1000人以上で実就職率が高い大学
東洋経済オンライン / 2024年12月21日 7時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください