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最盛期から半減「やきとり大吉」"反転攻勢"の秘策 課題は店主の高齢化、「白い大吉」で若返りを図る

東洋経済オンライン / 2024年10月11日 8時25分

このような店を作るに至ったのは、2021年、全国1万人に「大吉は世の中のお客様からどう見られているのか」というアンケートをとった結果を反映してのことだ。その結果、大吉の認知度は全国で非常に高かったそうだが、「入ったことがあるか」と聞くと極端にスコアが下がったそうだ。

さらに、「知っているけど行ったことない」人も多く、その原因で一番多かったのが、「中が見えにくい」「どんな店主がいてどんな雰囲気で、どんな席構成なのかが見えにくく、入りづらい」だったという。

「大吉の店主はよく『3回来た人は絶対常連にする』と自信満々に言うのですが、その最初のハードルが高いことが分かりました。そこで、最初の一歩を踏み入れてもらう店を開発したんです」(近藤社長)

白い大吉は現在、東京、神奈川、大阪、兵庫に9店舗あり、事業を検証するため、客層、客数、ABC分析などデータを取って検証中だ。現状、赤い大吉に訪れる顧客の女性比率が2、3割なのに対して、白い大吉は5割が女性。20代も取り込めているという。

また、白い大吉はメニューも「若者や女性に受けるものを」と、赤い大吉の焼鳥に加えて、ガリ・しそ・トマトを甘酢で味付けした「ガリしそトマト」など一品物を置いている。これらのメニューは、客の反応が良ければ赤い大吉へも随時移植しているそうだ。

「大吉には直営店がなく、テストキッチンもないので、これまで商品テストができませんでした。白い大吉はその役割も果たしてくれています」(近藤社長)

赤い大吉の店主からは、当初「こんなメニュー作れるかな」と不安の声もあったそうだが、顧客の好評を受けて、「これからもいいメニューがあったらうちにも回してね」とよく言われるのだとか。今後については白い大吉のデータを見定め、赤と白のすみ分けを考えていく構え。ただ、店主との会話から、すでに白と赤の大吉を回遊する客も出てきているそうで、幸先は明るい。

赤と白のいいとこどりをした「新・赤大吉」も

さらに2024年8月には、赤い大吉のニューモデル「新・赤大吉」も平和台に誕生した。こちらは、白い大吉の中が見える良さを取り入れた、赤い大吉のテスト店として造られたものだ。

今後赤い大吉が改装していく際に、白い大吉のいいところを取り入れたらどうなるのか。そのイメージを明確にすることを目的に造ったのだという。

ロゴも刷新し、看板に隙間なく筆文字で入った従来のものではなく、軽めの筆文字で隙間も作った。「大吉」というロゴが「重たい感じがする」という声がアンケートにあったからだ。

新・赤大吉の売り上げは非常に好調で、今後赤い大吉を造る際には、このタイプになる予定とのこと。従来の店の店主に、改装を促す役割も担っていくという。

経営の教科書・大吉でも直面する高い壁

取材前、筆者は近所の大吉に家族で足を運んだ。そこには、おそらく約40年前と変わらぬ店主と顧客の語らいがあり、焼台から上がる香ばしい煙と共に、この業態の本質を物語っていた。

大吉が今直面する課題と挑戦は、日本の外食産業全体が抱える問題の縮図とも言えるだろう。生業主義の強みを活かしながら、店主の若返りや新業態の開発に注力し、鳥貴族と融合して新たな一歩を踏み出す。そんな大吉の多面的な戦略は、難問を打破する新たな可能性を示していくに違いない。

前編はこちら:鳥貴族が買収「謎の焼鳥チェーン」人情派な儲け方 赤と黒の看板の「やきとり大吉」は"経営の教科書"だ

笹間 聖子:フリーライター・編集者

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