家政婦訴訟で浮き彫り「労基法なき職場」の過酷 総裁選でも議論浮上「働き方改革」否定の禍根
東洋経済オンライン / 2024年10月11日 7時15分
急失速の最大の要因とみられるのが、「労働市場改革の本丸」だとして、解雇規制の緩和を1年以内に実現するとした出馬会見の発言だ。これには野党のみならず、総裁選のほかの候補者からも批判が相次いだ。実はこの時、小泉氏はもう1点、雇用問題について見過ごせない発言をしている。労働時間規制の緩和に関するものだ。
小泉氏は労働時間規制の緩和も主張
「労働時間規制の緩和も検討します。労働者の働きすぎを防ぎ、健康を守るのは当然のことですが、現在の残業時間の規制は、原則として月45時間が上限になっていて、企業からも、働く人からも、もっと柔軟に働けるようにしてほしいという切実な声が上がっています。一人ひとりの人生の選択肢を拡大する観点から、残業時間規制を柔軟化することを検討します」
9月6日の出馬会見で小泉氏は、労働時間規制の緩和についても上記のような踏み込んだ発言をしている。同時期に同じく候補者の河野太郎氏も「自らの意思で働きたいと思う人については、思う存分働けるような選択肢を広げる働き方の改革が必要」と、小泉氏と同趣旨のことを語っている。
解雇規制のように今回の総裁選で大きな争点となることはなかったが、小泉、河野両氏がそろって、「もっと働きたい人がいる」という、本人の同意のみを条件とするかのような労働時間規制の緩和を求めていた点からも、これは解雇規制の緩和以上に多くの労働者の日々の暮らしに直結する内容だ。そしてそれはこの間進められてきた「働き方改革」の流れとは正反対で、その否定にもつながりかねない。
第2次安倍晋三政権肝煎りで、2019年に施行された働き方改革関連法は、罰則付きの残業時間の上限規制を柱としている。それまでは残業時間の限度を、法律ではなく厚生労働大臣の告示で定めており、原則こそ月45時間かつ年360時間とされていたが、罰則などによる強制力がないうえ、労使が合意し「特別条項」を設けることで、青天井で残業させることが可能となっていた。
それを仮に労使合意があっても上限を年720時間(月平均60時間)に規制するなどの歯止めが、罰則付きの法律として定められた。当初、長時間労働の実態があまりにひどく、この上限規制の適用が5年間猶予されてきた、ドライバー、建設業、医師の3業種にも紆余曲折がありながらも今年4月から適用されるようになった。
ようやく健全化に踏み出したはずだが
ドライバーと医師の残業上限は年960時間、一部の医師に至っては最大で年1860時間まで残業が認められるなどまだまだ残る課題は少なくないが、ようやく健全化に向けた一歩を踏み出した矢先といえる。
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