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解説者が「大谷翔平のモノマネ」でクビになった訳 米国の「キャンセルカルチャー」はどこへ向かう

東洋経済オンライン / 2024年10月11日 13時30分

もともと「Woke」という言葉は「Wake(目覚める)」の黒人アクセントに由来し、1940年代にブラック・コミュニティの間で、人種差別に対し「目覚める」こと、すなわち「立ち向かう」ことを喚起する口語として用いられたのが始まりと言われている。

活字としても、公民権運動が盛り上がりを見せる1962年の時点ですでにメディアに登場し、黒人作家、ウィリアム・メルヴィン・ケリーが『ニューヨーク・タイムズ』誌に「“If Youʼre Woke You Dig It”(目覚めているなら、わかるはずだ)」と題した記事を寄せた。

以後、約半世紀にわたって日の目を浴びることのなかったこの語だが、2008年にミュージシャンのエリカ・バドゥが自身の楽曲『Master Teacher』内で「I stay woke」と歌ってからは、リバイバル的に使用されるようになった。

とりわけ2014年、黒人青年マイケル・ブラウンが警官に射殺された事件をきっかけに、ブラック・ライヴス・マター運動が全米で展開されると、多くの人々が「目覚め」た結果、連日「ウォーク」が用いられるようになった。

そして2010年代後半に突入すると「ウォーク」は「黒人への人種差別」という本義を超越し、あらゆる差別に対して抵抗する姿勢を表す言葉へと変容を見せる。

2017年以降の「#MeToo運動」や、同性婚の権利、人工妊娠中絶へのアクセスを求める社会的なムーヴメントの中でもしきりに用いられ、現在では「差別に敏感な姿勢」全般に対して用いられる。こうした「正しさ」を追求する社会的風潮を「Woke Culture(ウォーク・カルチャー)」と呼ぶ。

「正しさ」と「言論の自由」のせめぎ合い

そして重要なのは、この「ウォーク」という語は、それを用いる人々の政治的イデオロギーによってニュアンスが異なる点だ。

リベラル層が「マイノリティへの差別に敏感な文化」を指すポジティヴな文脈で使用するのに対し、保守層は「ポリティカル・コレクトネスを遵守しすぎる、過敏すぎる文化」という揶揄含みの批判的文脈で用いる。

2017年、大統領に就任したトランプの差別的かつ排外的な言辞は連日メディアやSNSで批判にさらされた。しかしそうした批判をも、本人は「言論の統制」であり「軟弱」だと一蹴した。

そして、しだいに「ウォーク」の時流は発言者そのものを社会から「キャンセルする(排除する)」ベクトルへと発展していく。トランプという「ウォーク」とかけ離れた大統領の時代、「正しさ」と「言論の自由」のせめぎ合いの中で、今日の「キャンセル・カルチャー」は生み出された。

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