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娘の死から最期まで22年の日記に吐露された心情 「只生きている。死ねば完了」の境地に至るまで

東洋経済オンライン / 2024年10月14日 10時20分

その後もSさんは自宅での暮らしを続け、2024年5月に亡くなった。Sさんの介護のために実家に戻ったAさんは、その生活の中でT医師の遺品整理をし、そこで28冊の日記を見つけた。

読もうと思ったが、強いくせ字が立ちはだかって断念した。「時間のある時に読もうと思いつつも、たぶんその時はこないだろうと思っていました」と言う。しかし、捨てる選択肢はなかった。

「父の部屋を片付けた時、祖母の日記が一冊出てきたのですが、風呂敷に包まれたまま物に埋もれていた状態でした。どうしようもなくて捨てたのですが、後に母に言ったところ『叔母に渡せばよかったのに』と言われ、その手があることに気がつきました」

このときのつらい思いは二度としたくないし、自分が死んだ後に別の誰かにも味わせたくない。そこでネットで「日記 遺品 どうする」などと検索し、志良堂さんが主宰する「手帳類プロジェクト」の窓口にたどり着いたというわけだ。

「只生きている。死ねば完了。」

T医師の人生の終わりは、おそらく本人にとって予想外のかたちで訪れた。けれど、そうした終わり方もよしとするスタンスで晩年を生きていたことは、ふとしたきっかけで語られる死生観から読み取れる。

新居に移ってしばらく経った2004年の秋につづった日記が象徴的だ。ムッチャンに語りかけるとも、ですます調で独白しているだけともとれる記述。最後に引用したい。

<二十才前後
 私は、何のために生きているのかを
 毎日考えていました。
 それは、生きていてもしょうがないと
 いうことでした。
 それから五十年以上たって。
 やっと、答えが出ました。
 それは、“生きてる”
 という答えです。
 別に何もないのです。
 頑張ることもない
 只生きている。死ねば完了。
 何の、哲学、宗教が要りましょう。
 ゴキブリの如く、
 死ねばいいのです。>

古田 雄介:フリーランスライター

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