娘の死から最期まで22年の日記に吐露された心情 「只生きている。死ねば完了」の境地に至るまで
東洋経済オンライン / 2024年10月14日 10時20分
<8.22(日)p.8.50
Mが亡くなったとき、
ベートーベンをものすごく聴きたかった
勇気を与えてくれた.勇気を必要とした。
今はしかし、少しも聴きたくない(もう勇気はいらないのか?)
聴きたいのは只、バッハ、ヘンデル、×のバロック(シューベルトも少し)>
夢にあまりムッチャンが現れてくれなくなった、とこぼす日記もこの頃に見られた。それでも形見のスケッチはたびたび描かれ、親子二人でススキ野原を歩きながら童謡を歌った思い出の情景も繰り返しノートを埋めている。ムッチャンとの思い出を筆に乗せるのは、やはり必要な行為だった様子だ。
架け橋ではなくなっていたモモ
2008年に75歳=後期高齢者となっても、T医師の暮らしと内面に大きな変化はなかった。しかし、2011年の秋にはモモが老衰でこの世を去る。
<11.15(火)pm8.35
モモ死了!
(am 7.25)
眠ったままでした。
1年9ヶ月間、苦労したおかげか、
最后は実にスムーズでした。
昨日なんか 耳だれが癒ったなんてお母さんが言うほど。
最后の瞬間、お母さんに抱かれて、幸せでした。
お母さんが長野に行く直前に"サヨナラ"をしました。
ムッチャンとのつき合いから 14年間
まわりのみんなを幸せにしてくれました。
多謝! モモ! 再見!>
日記を書き始めた頃、モモはムッチャンと現世をつなぐ特別な存在だった。T医師はモモの眼差しや声をかけたときの反応の隅々にムッチャンをみていた。しかし、モモが衰弱して死を迎えるまでの1年半の日記からは、故人との架け橋が失われていく絶望のようなものは感じられなかった。ただただ家族の一員としてモモを心配し、そして死後には悲しんだ。
この数年の間にT医師の中でムッチャンとの死別が、悲しくも折り合いのついたものになっていったように感じる。
振り返れば、2004年頃の12冊目のノートの表紙からは「Mへ」との記載がなくなっている。日記の書きぶりからも、2000年頃から2010年頃にかけて、ノートの向こう側にいるムッチャンが少しずつ遠くになっていった感触がある。
変化した先にあったのは、ムッチャンに語りかけるためのですます調をそのままに話し相手が霧散した独白だった。2012年5月の日記。
<5.25(日)pm9.25
ムッチャンのボーシを描きました
前はもっと一生けん命かいたのに、
近頃はその一生けん命がないのです。
何故?
生きていることが一生けん命ではないからだ。
でも一生けん命生きようとしています。
この下らない世の中で。>
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